◆昨日の小欄では「妖怪ウォッチ」ブームを取り上げた。企画元のレベルファイブは未上場企業なので株式市場の評価はないが、関連玩具販売が好調なバンダイナムコHDの株価は堅調に推移し、バンナムの子会社で玩具卸のハピネットの株価は昨年秋から3倍近くに急騰した。そうした「妖怪ウォッチ」ブームの恩恵に浴さない銘柄がある。任天堂だ。そもそも「妖怪ウォッチ」は任天堂3DSの専用ソフト。本丸とも言える企業の株価が冴えない。
◆任天堂と言えば、かつては時価総額が10兆円を突破し、トヨタ自動車、三菱UFJといった日本を代表する大企業に次いで第3位の株式価値を誇った会社である。それがいまや時価総額はピークの5分の1以下に沈んでいる。任天堂の業績は2014年3月期まで3期連続の営業赤字。不振の背景ははっきりしている。スマホ全盛のいま、ゲームは無料でダウンロードできるアプリが主流になっている。任天堂はこの流れに対応できていないのだ。先月開かれた任天堂の株主総会でも株主からスマホ対応を問う質問が相次いだ。
◆その株主総会に岩田社長の姿はなかった。胆管に腫瘍が見つかり、手術を受けたためという。岩田社長は故山内オーナーから社長に指名され、「ニンテンドーDS」や「Wii」を世に送り出し大ヒットさせた。それが株価を押し上げ時価総額10兆円越えの原動力となったのだが...。
◆任天堂株が最高値を記録したのは2007年の10月末。取引時間中には翌11月1日にさらに上値をつけたが終値では下がってしまった。上述したように当時はDSやWiiが絶好調だったときだ。それでも株価はピークアウトした。株価は半年から1年先を読むという。任天堂の株価が天井をつけたその8か月後、任天堂が苦境に追い込まれる元となったスマートフォンが日本で発売された。ソフトバンクがアップルのiPhoneの販売を開始したのは6年前の今日、7月11日のことだった。
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆