先週の上海証券取引市場、深セン証券取引市場、香港証券取引市場ですが、週前半は下落したものの、週後半に反発となりました。まず、週初に発表された2月のHSBC中国製造業PMI速報値は期待に反して50.4と下がり、かろうじて景況感の境目である50を上回ったものの、1月の確報値である52.3を下回りました。もっとも、2月は旧正月の影響があったはずで、正確にこれを判断することは難しいと思います。HSBCのエコノミストも、2月のPMI速報値は低下したものの、重要な節目にあたる50を4ヶ月連続で上回ったと指摘しています。

しかしともあれ、予想を下回ったことで株式市場には軟調ムードが拡がり、さらに国営紙の中国証券報が、最近の中国の金融緩和政策が終わりを迎えていると報じたことから株価は下落。特に上海証券取引市場、深セン証券取引市場では金融政策の影響を受けやすい銀行株が売られました。ところが週後半になると、3月5日に開幕予定の全国人民代表大会(全人代)への期待感や日本を中心としたアジア株や米国株の上昇を好感し反発となりました。

その他のニュースとしては香港政府が2軒目の住宅すべてについて印紙税を2倍に引き上げたことがあります。これで香港政府が不動産価格を抑える意志が明確になり、香港の不動産企業の株価の足を引っ張っています。一方、中国では新華社通信が中国は近く人民元適格海外機関投資家(RQFII)制度の規則を緩和するとの記事を掲載したことがあります。具体的にはRQFII制度に参加する投資家の対象が広がり、現行は20%に抑えられているRQFIIファンドの株式への配分比率が引き上げられる可能性が指摘されており、これは上海証券取引市場、深セン証券取引市場にとってプラスのニュースとなっています。このように様々な材料が出ていますが、前述したように今週からはいよいよ全人代が開幕となりますので、3月3日から開催されている政治協商会議と併せた、いわゆる両会からの材料によって値動きが大きく左右される相場展開となりそうです。

コラム執筆:戸松信博