◆今年のアカデミー賞で脚本賞を受賞したスパイク・ジョーンズ監督「her 世界でひとつの彼女」が日本でも封切となり話題を呼んでいる。近未来のロサンゼルスを舞台に、人工知能OS「サマンサ」と恋に落ちる中年男の物語。「サマンサ」を演じるのは人気美人女優スカーレット・ヨハンソン。但し、「演じる」と言っても声だけである(もったいない!)。主人公はOSの「声」に惹かれたのだ - いや、「声」で話すOSに恋したのである。

◆話すOSというのはもう既に現実のものだ。アップルのiOSに搭載されている「Siri」がそうだし、似たような機能は他社のスマホにも採用されている。話す機械の代表例がカーナビだろう。「200メートル先、右方向です」などの音声案内はすっかり耳に馴染んで生活のなかに溶け込んでいる。

◆音声入力・音声読み上げ機能を備えた翻訳アプリは日進月歩の進化を遂げている。先日開催された世界の学生を対象にしたアイデアコンペでスウェーデンの学生たちが受賞したアイデアは、「グーグル・ジェスチャー」。手話をリアルタイムで音声に変えることで、手話を使うひとが健常者ともっと密なコミュニケーションが可能になる。こういう素晴らしいアイデアも、きっとすぐ現実のものとなるのだろう。

◆主婦仲間で話題になっているのだと「話す体重計」なるものを妻が買ってきた。「Aさんは『骨密度が足りません』って言われたんですって。Bさんなんか『体年齢が55歳です』って!私はなんと言われるのかしら!?」 妙な期待を抱きながら妻が体重計に乗ると、その機械はこう言った。「おひとりずつお乗りください」。その機械が跡形もなく粉々になったのはご想像に難くないだろう。

マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆