先週の振り返り=年初来の米ドル高値を更新

米ドル/円は米金利上昇に沿った形で高値更新

先週の米ドル/円は、ほぼ一本調子で上昇し、3月に記録した年初来の米ドル高値を更新しました(図表1参照)。この動きは、基本的には米金利上昇に沿ったものでした(図表2参照)。米金利の上昇は、警戒された米債務上限問題への解決期待が広がったこと、そして6月の米利上げ予想が浮上した影響が大きかったでしょう。

【図表1】米ドル/円の日足チャート(2023年2月~)
出所:マネックストレーダーFX
【図表2】米ドル/円と米2年債利回り(2023年4月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

米金利の中でも、米金融政策を反映する米2年債利回りは、3月に金融システム不安が浮上してから急ピッチで低下。一時は4%も大きく割り込み、5月に5~5.25%の誘導目標まで引き上げられた政策金利のFFレートを1%以上大幅に下回るところとなりました(図表3参照)。これは、FFレートが早期に大幅に引き下げられることを先取りした動きと言って良かったでしょう。一時は、「早ければ6月にも利下げ」との見方も浮上しました。

【図表3】米2年債利回りとFFレート(2018年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

ところが、上述のように、先週にかけては「6月FOMC(米連邦公開市場委員会)でも利上げの可能性が出てきた」との見方が浮上しました。こういった中で、早期の大幅な利下げを先取りして大きく低下した米2年債利回りは、早期利下げ予想の「間違い」を是正する中で上昇。それに連れる形で米ドル/円も年初来の米ドル高値更新となったのでしょう。

米金利は当面、低下余地は限られ上昇リスクを試す可能性あり

なお、米金利は、2年債利回りが3.8~4.2%、10年債利回りが3.3~3.6%といった狭いレンジを中心とした一進一退が約2ヶ月と長く続いてきましたが、先週はそれを上方向にブレークしてきました(図表4参照)。基本的に長く続いた小動きを抜けると、溜まったエネルギーが発散されることで、それまでのレンジにはしばらく戻らず一方向に大きく動きやすくなります。その意味では、米金利は当面低下余地が限られ、上昇リスクを試す可能性があるでしょう。

【図表4】米2年債及び10年債利回りの推移(2023年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

米2年債利回り次第で140円に届く見通し

これまでの米2年債利回りとの関係を前提にすると、米2年債利回りがこの間のレンジ上限の4.2%以下へしばらく戻らないなら、米ドル/円も下落余地は限られる可能性があります。その上で、米2年債利回りが4.5%以上に上昇するなら米ドル/円は140円に届く見通しになりそうです(図表5参照)。さらに、現在のFFレートの水準である5%まで米2年債利回りが上昇するなら、米ドル/円は145円を目指す、それが米金利との関係からの大まかな目安になるのではないでしょうか。

【図表5】米ドル/円と米2年債利回り(2023年4月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

今週の注目点=米6月利上げの有無は?

今週は、5月26日にFRB(米連邦準備制度理事会)が重視するインフレ指標とされるPCEデフレータの発表が予定されています。一時は見送りと見られていた6月の米利上げについて、改めて利上げ予想が再燃したことから、PCEデフレータの結果は、早期利下げ予想是正に伴う金利上昇が一段と広がるかについて影響することになりそうです。

では、仮に6月FOMC利上げ予想が一段と強まった場合、米金利上昇を手掛かりに米ドル/円は140円を大きく超えていくでしょうか。

米ドル/円は2022年10月に151円まで上昇する中でサポートされてきた120日MA(移動平均線)を、その後一時127円まで急落する中で大きく割り込みました(図表6参照)。上昇トレンドが展開する中ではなかったこのような現象が起こったということは、トレンド自体が下落(米ドル安・円高)へ転換した可能性を示しています。そうであれば、トレンドと逆行する上昇はあくまで一時的な動きである可能性が高いでしょう。

【図表6】米ドル/円と120日MA(2010年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

140円を上回ると行き過ぎ懸念が強まる可能性

図表7は米ドル/円の120日MAかい離率ですが、これを見るとトレンドと逆行する動きは最大でも120日MA±5%程度までとなっていました。足元の120日MAは133.4円程度なので、それを5%上回る水準は140円程度といった計算になります。以上のことから、米ドル/円のトレンドと逆行する一時的な上昇は、140円を越えてくると行き過ぎ懸念が強まるのではないでしょうか。

【図表7】米ドル/円の120日MAかい離率(2000年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

米金利の保合い上放れ、米ドル/円の年初来高値更新で、米金利、米ドルともに、テクニカルには上昇余地を探る展開が続きそうです。最大の注目テーマは6月FOMCでの利上げの有無になるでしょう。ただし、140円を上回るようなら、徐々に行き過ぎ懸念が強まる可能性があるのではないでしょうか。以上を踏まえると、今週の米ドル/円は136~141円中心での展開を想定したいと思います。