マネー誌の人気企画に「1億円特集」というのがあります。金融商品を使って1億円の資産形成を目指す方法を伝授するものです。
私も2009年に「60歳までに1億円つくる術」という書籍を書いたことがあります。1億円を手に入れるための投資方法について、年代別にシミュレーションした内容です。
この書籍を書いて、しばらくしてから気がついたことは、もし1億円を手に入れたとしても、人生を豊かにできるとは限らないということです。
お金の前に人生で何をしたいかを考える
その理由は、お金は人生の目的ではなく、人生を豊かにする手段に過ぎないからです。もし、1億円を手に入れたからといっても、それが自分の人生に必要なお金とは限りません。
資産運用で大切なことは、やみくもにお金を増やすことよりも、まず自分が人生においてやりたいことを考えることです。その上で、それを実現するために必要なお金を手に入れる方法を考える。これが正しい手順です。
残念なことに、多くの人は自分が人生で何をしたいかについて、時間をとってじっくり考えることがあまりありません。
目先のことにフォーカスしてしまい、長期的な視点から人生を考えないという問題があります。
ビジョンとミッションを書き出してみる
そこで、私が20年近く前から実践しているのは、人生のビジョンとミッションを書き出してみることです。
ビジョンとは人生の具体的な目標です。自分の興味を持っている分野で何をしたいのかを思いつくままに書き出してみましょう。
私の場合、仕事、健康、人間関係、家族、趣味(旅行、食べ歩き、ワイン)、社会貢献などに分類して、それぞれの分野で実現したいことを決めています。
一方のミッションとは、ビジョンを実現することができるような、人生の根本的な目標です。
ビジョンを書き出すことは比較的簡単ですが、もしかしたら、ミッションを見つけるまでには少し長い時間がかかるかもしれません。ミッションはそれらを統合させて、より抽象的な概念として考えていくものだからです。
ミッションがあれば人生はブレない
大昔の旅行者は夜空で道に迷わないように、北極星を目印にして歩いていたそうです。ミッションとは、これと同じように人生という旅行に迷わないようにするための道しるべとなるものです。
自分に合った明確なミッションを見つけることができれば、人生の迷いは消えていきます。
ビジョンは、自分の人生のやりたいことが変わってくれば変化することがあると思います。定期的に見直して、自分の考えに変化があれば、柔軟に修正していけば良いでしょう。
しかし、それらを実現することによって、自分がどのような人になりたいかを示すミッションは簡単には変わらないはずです。
ストックよりフローを増やすことも考える
ここまで説明してきたように、資産運用において、お金を目的ではなく手段として捉えることは、とても大切な考え方です。
そして、もう1つ間違えてはいけないことは、ストックの発想だけではなく、フローの発想を持つことです。
多くの個人投資家は、保有する資産を増やしていくというストックに目を向けがちです。しかし、シニアになると年金のように定期的に入ってくるフロー収入の有り難みが増していきます。
老後の経済的に安定した生活を実現するには、まとまった資産を保有するより、毎月定期的に収入が得られる方が良いと言えます。
ストックの資産を現役時代に積み上げ、リタイア後に少しずつ取り崩すやり方は、平均寿命が伸び、何歳まで生きるかわからない高齢化社会においては不安定な方法だからです。
例えば、1億円の資産を持っているより、毎月30万円の定期的な収入が得られる方法を手に入れる方が、経済的な安心感は高くなります。
資産運用で覚えておきたい2つのポイント
やみくもにお金を増やそうとする資産形成のやり方には問題があります。
また、ストックだけではなくフロー収入に注目することも、将来のお金の不安を解消するために大切な考え方です。
目的ではなく手段、ストックだけではなくフローの発想を持つ。この2つのアプローチによって、お金と上手に付き合ってください。