アリババ・グループ・ホールディングが事業6分割で組織再編、各部門が上場する計画を発表
2023年3月上旬~2023年4月上旬の中国本土市場・香港市場はまちまちの動きになっています。2023年3月6日終値~4月3日までの騰落率は、上海総合指数が+0.5%、香港ハンセン指数は-0.9%となっています。
上海総合指数は高値での停滞が続いている感じですが、50日移動平均線は上向きで推移してきており、足元の株価基調も強くなっています。一方で、香港ハンセン指数は3月20日頃までは調整が続き、その後、50日移動平均線まで上昇してきたところです。
この動きは世界の株式市場の影響を受けている側面があります。米国の銀行の相次ぐ破綻や、クレディ・スイスが経営不振に陥るなど、金融危機が懸念される状態で世界的に株価が下げる中で香港株も下げました。その後、米国とスイスの中央銀行が他の金融機関に危機が波及しないように流動性を提供したことから、懸念が後退して世界の株価が反発すると、香港株も反発してきています。
香港株の足元の株価が上昇しているもう1つの要因は、電子商取引で最大手のアリババ・グループ・ホールディング(09988)が事業を6つに分割し、各部門が独立して経営していく方針を示したことです。
新会社は各々株式公開をする可能性があるとしており、この発表を受けてアリババ・グループ・ホールディングの株価は急騰しています。また、同じくテンセント系の電子商取引大手あるJDドットコム(09618)も、京東智能産発(不動産部門)と京東工業(工業部門)の傘下2部門を分離して香港市場に上場させる計画を明らかにしました。
このニュースが好感されたことによって、香港市場ではIT、ハイテク関連が全般的に強い基調となり、香港のテクノロジー銘柄から構成されるハンセンテック指数は当該期間3.0%の上昇となっています。
中国テック企業、春の季節到来か
ところで、アリババ・グループ・ホールディングの創業者である馬馬(ジャック・マー)氏は2020年秋のアントフィナンシャル上場直前に中国政府との確執が報じられ、その後は海外で過ごし、中国での影響力は低下しているとみられていました。
しかし、一部報道によると、同氏は今なおアリババ・グループ・ホールディングに対して影響力を持ち、会社分割を海外から指揮していたとのことです。同氏が公の場(杭州の学校を電撃訪問)に再び姿を現したことは、中国政府との雪解けを示すのかもしれません。
そして、この雪解けはアリババ・グループ・ホールディングに対してだけでなく、李強新首相のもとで、民営企業、とりわけ中国政府が民営のハイテク企業を経済成長に取り込もうとする表れである可能性があります。
そうだとすれば、これらのニュースは非常に大きな意味を持つと思います。李強新首相は就任最初の記者会見で民営企業を支援することを力説しました。また、李強新首相は上海市長時代に、テスラ(TSLA)を前例のない厚遇で上海誘致へと導いた中心人物でもあります。
この誘致を起点に、2018年にテスラは上海ギガファクトリーを建設し、その後の業績と株価の起死回生へと繋がっていった経緯があります。今後、アリババ・グループ・ホールディングやJDドットコムが行ったようなことが、他の中国テック株にも起こるかどうか、注目したいと思います。
なお、当該期間に発表された中国の経済指標ですが、2月の鉱工業生産は年初来で前年同期比2.4%増(市場予想2.6%増)、小売売上高は3.5%増(市場予想3.5%増)、固定資産投資は5.5%増(市場予想4.5%増)。3月の中国国家製造業PMIは51.9(市場予想51.6、前月実績52.6)、中国国家非製造業PMIは58.2(市場予想55.0、前月実績56.3)、Caixin中国製造業PMIは50.0(市場予想51.4、前月実績51.6)とまちまちの内容ではありますが、明らかにゼロコロナから脱却し、経済再生が進んでいることがわかる内容だと思います。
ここまで解説してきたように中国のテック企業には春の季節が訪れようとしており、中国経済もゼロコロナからの経済再生が見られようとしているところです。中国のテック企業の株価は大きく上昇しているとはいえ、2021~2022年に大きく下落してきたことから、未だに割安感があるため、投資を検討しても面白いと思います。