今回は内需関連株について考えてみたいと思います。

国内需要に反映される内需関連株

内需関連株(あるいは内需株)とは、国内の需要に基づいて売り上げや利益が増減する企業、もしくは業種の銘柄を指します。

内需関連株と対になるのが外需関連株(あるいは外需株)です。外需株とは、外国からの需要に基づいて売り上げや利益が増減する企業、もしくは業種の銘柄です。こちらは次回のコラムで詳しく解説します。

内需株は、企業が生産活動を行い、生産した製品をすべて国内で売りさばくことができれば、それはその製品に対する需要が国内に十分あることを示しています。反対に、売れ残ってしまえばそれは需要が少ないことになります。

国内の需要がすなわち「内需」であり、主に国内における需要を満たすためにモノを作り、サービスを提供している企業の銘柄が内需関連株(内需株)です。

「内需」という用語は、元は国民所得統計(わかりやすく言えばGDPの計算)で用いられる概念です。経済学の分類に基づいて内需を構成する要素を示すと下記になります。

1.4つの項目で構成される「民間需要」
・個人消費(=民間最終消費支出)
・民間住宅投資
・民間企業設備投資
・民間在庫投資

2.3つの項目で構成される「公的需要」
・政府最終消費支出
・公共投資(公的固定資本形成)
・公的在庫投資

上記1、2の合計となります。

生活に密着する内需関連株、その業種も多種多彩

上記のような経済学上の分類を、現在の株式市場の業種分類にそのまま当てはめると、「個人消費」は百貨店、スーパー、コンビニなどの「小売」セクターが真っ先に挙げられます。

小売には他にも、ドラッグストア、専門店(アパレル、シューズ、生活雑貨、百円ショップ、スポーツ用品など)、レストラン、ラーメン店、牛丼店、居酒屋、パン屋、コーヒーショップ、ハンバーガーショップ、洋菓子店、など広範囲にわたります。大きなショッピングモールを思い浮かべるとわかりやすいでしょう。

「個人消費」のカバーする範囲はより幅広く、旅行代理店、美容院、理髪店、スポーツジム、マッサージ、ゲームセンター、携帯電話ショップ、本屋、文具店などにも及びます。店舗を持たないネット上の各種Eコマース店も含まれます。

株式市場の業種分類で言えば、「小売」の他にも「情報・通信」、「サービス」が当てはまります。

「住宅投資」に関連する産業としては、戸建て住宅メーカーに始まり、マンションメーカー、土木・建築会社、給湯器・太陽光発電などの住設機器メーカー、ガラス・サッシ・外壁・ドア・シャッターなどの建材メーカー、他にも空調機器、電気工事会社などが関わってきます。

家を建てればインテリアなど暮らしの装備品が必要となります。液晶テレビ、炊飯器、冷蔵庫、電子レンジなどの家電製品を扱う家電量販店や、本棚・家具・寝具・台所用品などのインテリア、食生活を豊かに満たす食品会社も関わってきます。

こうなると、あらゆる身の回りの品々が関わってくることになり、一口に「内需関連株」と言っても驚くほどの広がりを持っていることがわかります。

政府の「公共投資」にはビルやダム・治水工事に関わる大手ゼネコンに始まり、道路舗装会社、橋梁メーカー、鉄鋼、セメント、ガラス、電線メーカーから、それらを作る建設機械、足場の組み立て、リース会社まであらゆる産業が関わってきます。

電気料金やガス料金は毎月発生しますし、引っ越しや通勤・通学には鉄道会社やトラック輸送会社が関連することになります。

株式市場の業種分類では、「建設」、「不動産」、「食品」、「電気・ガス」、「金属製品」、「倉庫・運輸」、「電気・ガス」などが該当します。

まさに「その人の人生そのもの」が内需関連株のカバーする範囲となりそうです。上記で挙げた業種の時価総額をすべて合計すると2022年末の時点で250兆円にのぼり、東証プライム市場全体(676兆円)の36%になります。(「銀行」、「保険」、「証券」などの金融セクターは除いています)

内需関連株の中でも時価総額の大きい企業銘柄

これほどの広がりを持つ内需関連株ですが、ここでは各業種から時価総額の大きな企業を挙げておきます。

「小売」では、スーパーのイオン(8267)、コンビニのセブン&アイ・ホールディングス(3382)、百貨店の三越伊勢丹ホールディングス(3099)、高島屋(8233)、アパレルのファーストリテイリング(9983)、しまむら(8227)があります。

また、ハンバーガーショップの日本マクドナルドホールディングス(2702)、インテリアショップのニトリホールディングス(9843)、ドラッグストアのマツキヨココカラ&カンパニー(3088)、同じくウエルシアホールディングス(3141)も知られています。

その他にも、家電量販店のビックカメラ(3048)、ファミレスのすかいらーくホールディングス(3197)、サイゼリヤ(7581)、ロイヤルホールディングス(8179)、牛丼チェーンの吉野家ホールディングス(9861)があります。

「情報・通信」からは、日本電信電話(9432)、KDDI(9433)、ソフトバンク(9434)、「サービス」ではオリエンタルランド(4661)が挙げられます。

住宅や建設に関連する企業では、戸建ての積水ハウス(1928)、マンションの長谷工コーポレーション(1808)、給湯器のリンナイ(5947)、エアコンのダイキン工業(6367)、ゼネコンの大林組(1802)、トンネル工事の西松建設(1820)、橋梁メーカーの横河ブリッジホールディングス(5911)、などが内需関連株として国内外から注目されています。