3月FOMCは市場予想通りの展開

先週のFOMC(米連邦公開市場委員会)はマーケットのコンセンサス予想通りの展開となりました。3月22日(水)、FRB(米連邦準備制度理事会)は0.25%の追加利上げを行い、政策金利を4.75%から5%のレンジとしました。これで1年前の3月16日に利上げを開始してから今回で9回目の利上げを行い、2007年9月来の高いレベルとなりました。パウエルFRB議長は、インフレ抑制を優先したのです。

22日(水)の午後、パウエルFRB議長が記者会見を行っている時間帯にイエレン財務長官は上院小委員会に出席しており、マーケットは2人の発言に同時に注意を払う必要がありました。米国の中央銀行の議長と財務長官が同じ時間帯に発言を行うことは極めて稀なことです。2人は立場が違うため、発言内容は同じにならないのです。

例えば同日、パウエルFRB議長は、金融機関のストレスが拡大した場合には預金者をより広く保護することを示唆する発言をしました。しかしその後、イエレン財務長官はその希望を打ち砕くような発言をしたのです。そのようなこともあり、この日のマーケットは2人の発言に振り回され、乱高下しました。

利上げを受けてこの日は下がったものの1週間を通してみると、S&P500は1.39%上昇、ナスダック100も1.97%上昇しました。マーケットの反応から判断すると、明らかに0.25%の利上げは想定内のことだったと言えるでしょう。一方S&P500銀行指数は1.15%の下落となっています。

SVBショックは株式市場より債券市場にダメージ

さらに言うと、シリコンバレー銀行など一連の破綻についても、あれだけ大々的にマスコミに報道されリーマンショック再来かとの懸念も浮上した中、破綻が生じた3月10日の週末以降、S&P500は2.8%上昇、ナスダック100は7.9%上昇しています。前回のコラムで述べた通り、今回の出来事は株式市場より債券市場にダメージを与えているのです。

債券の恐怖指数と言われているMOVE指数は150を超えていますが、この指数の150はVIX指数では30に相当します。先週のVIX指数は20前半で推移していることから、株式市場のボラティリティは債券市場のボラティリティを下回っていることがわかります。

先週、マーケットを牽引したテクノロジー銘柄

では、なぜ株式市場は冷静さを保っていられるのでしょうか。株式市場は規制当局が、今回のシリコンバレー銀行の破綻が銀行業界全体へ飛火しないよう、なんとか食い止めていると信じているからです。リーマンショックの教訓もあり、状況が悪化すれば、インフレ期待が低下する中、必要に応じ利上げではなく、利下げという武器を使い始めることができると考えているのでしょう。

先週後半には、地方銀行の預金を解約して大手銀行に預金を移す動きも減速し始めたとの報道もありました。そんな中、先週の株式市場を牽引したのは引き続きGAFAMに代表されるテクノロジー銘柄です。先週アップル(AAPL)は3.39%、アルファベット(GOOGL)は3.76%、メタ・プラットフォームズ(META)は5.32%上昇しました。

米国企業の業績見通しは下方修正

株式市場の次の大きなイベントは4月から始まる予定の米国企業の決算発表でしょう。3月25日現在、第1四半期の業績予想は前年同期比で7.52%の減益となっています。2ヶ月前の1月21日時点の予想では2%の減益予想でした。つまり、この間で5.52パーセンテージ・ポイントの下方修正が起きたのです。果たして現在のレベルは、業績悪化のワーストケースを十分織り込んでいるのか、それとも今回の決算発表は事前予想を下回る展開となるのか。今後のマーケットの方向性を決めるのは4月半ばから本格化する決算発表にシフトしていくでしょう。