「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を維持

日本銀行は3月10日の政策委員会・金融政策決定会合において、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」と呼ばれる現在の金融政策運営を維持しました。また、「必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる」とこれまでのスタンスを維持しました。会合後リリースされた「当面の金融政策運営について」においても決定事項や方針について変更は一切ありませんでした。

直後の市場は円安、金利低下で反応しています。金利上昇を促す政策変更を期待した投資家の思惑が剥落した動きでしょう。株式市場も金利感応度の高い銀行等金融株が特に軟調に推移しました。なお、2月以降0.5%近辺で小康状態にあった10年国債金利は0.4%割れにまで幅を持った低下となりました。

その後の会見では在任期間について、デフレ期の15年からデフレではない10年への変化、と振り返りました。金融緩和により経済活性化・雇用の創出を果たせた効果が副作用よりもはるかに大きく、また足元ではこれまでの賃金・物価が上がらないというノルム(規範・慣習)に変化の兆しが出ていると述べました。賃金が上がりやすい環境にあり、金融緩和の継続で企業が賃上げしやすい環境を整えることが重要であり、出口戦略に関して検討するのは時期尚早で、各種効果について時間をもって見極めていく段階との認識を示しました。

植田新総裁、金融緩和の大枠は維持 金利上昇圧力が根強い中でのコミュニケーションに注目

今後は植田新総裁となります。直近の発言によれば景気に対する認識は展望レポートに沿ったものであり、また金融緩和の大枠は維持されそうです。ただし「必要があれば」点検・検証を実施するとの発言が出ています。イールドカーブ上の10年債の歪みが長期化し副作用が懸念される中で、見直しがどのタイミングでどのように進んでいくのか、また外国人投資家を中心に金利上昇圧力が根強い中でどのようなコミュニケーションが取られていくのか、発言にもあったデータに基づく論理的な判断・わかりやすい説明、がどのように展開されるのか注目されます。