マネーに関する記事、書籍のタイトルを見ていると、思い切った言い切り方のものが多いことに気が付きます。興味を持って手にしてもらいたい、読んでもらいたい、という意図からなのでしょう。
以前、出版社とのミーティングで、「絶対に」「確実に(儲かる)」といった言葉を入れたタイトルの本を執筆してほしいと言われ、FPとしてはどうしてもそんな言葉は使えないと折り合わず、執筆を断念したことがあります。
金融機関のコンプライアンスは大変厳しいですから、「この投信は『絶対に』値上がりします」とか、「この株式に投資すれば『確実に』儲かります」といった言葉は決して使いません。もし、そんな言葉を羅列した投資広告を目にした場合、その業者も投資商品も十分に怪しいですから、騙されないように気をつけましょう。

さて、ここのところ同じような印象を受けたマネー記事がいくつかありました。タイトルに「いい人」や「まじめで責任感の強い日本人タイプ」「日本人の美徳」はお金に縁が薄い、といったものが並ぶもの。こうした記事内に出てくる、「お金の話はいやらしいので他人としない」「お金を貯められない意思の弱い自分を責める」「金儲けをさげすむ文化」「清く貧しいことを美徳とする清貧の思想」等々にも、違和感を感じました。ちょっと悪くて、不真面目で無責任な人ってお金が貯まっていると思いますか?(もちろん悪事を働いてお金儲けをしているのは完全に論外です。)日本人は清貧が美徳・・・今の時代の話でしょうか?貧しくて生活が苦しくなることは誰もが避けたく、お金に困らない生活を望むのは当たり前のことですよね。どんな真面目ないい人でも!

SNS全盛期の今、怪しい情報がたくさん出回っています。首を傾げたくなるような投資手法を勧めるものもあります。そうした怪しげな情報について、多くを語り合ったところで得るどころか失うことの方が多いかもしれません。他人とお金について話をすることが必ずしも良いこととも限らないのです。
ましてや投資や運用の基本も学ばないまま、いきなりそんな話を聞いてしまえば、良し悪しの判断もできないでしょう。お金を働かせる工夫をする投資や運用は「金儲け」として蔑まれるものではないことも、誰もが知っています。ものごとに真面目に取り組むいい人、責任感の強い人ほど、きっちりと基本を身に着けることはできると思います。いい人はお金を貯めるけど、投資はしない・・・ということもなく、投資の勉強も継続して、無茶や無理をしない個人投資家に育つはず。投資に回すお金を作るのも意思の強さではなく、仕組みの工夫です。

世に出回る情報を鵜呑みにするのではなく、取捨選択するためにも基礎・基本を身に着け、自身のお金回りについては工夫をすることで、誰もがお金に困らない生活への一歩を踏み出せますよ。

廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー
CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員