ロシアのウクライナ侵攻から1年が経ちました。このような長期間にわたる大きな侵攻にエスカレートするとは、多くの人が予想していなかったと思います。

ウクライナが置かれている状況は決して他人事ではありません。将来、何が起こるかは誰にも予想できないのです。

これは資産運用でも同じです。

資産運用はリスクから考えるのが大原則

資産運用において、最も大切なことはリターンを狙うことではありません。リスクをコントロールすることです。

金融の世界では、リスクは変動率(ボラティリティ)で測定されます。将来の資産の変動予測が大きければ大きいほど、リスクが高いと判断されるのです。

しかし、想定外の事態とは、相場変動のようにボラティリティで数値化できるものではありません。

私はボラティリティだけではなく、最悪の事態を想定し、それぞれの場合にどこまで資産が目減りするかを考えておくべきだと考えています。

最悪の事態として、具体的には次のような事例が考えられます。

経済変動は繰り返される

リーマンショックのような短期間に大きな資産価格の変動が起こるマーケットの急変動は、今まで何回も繰り返されてきました。

株価の暴落、為替の急変動、不動産価格の下落、金利の急騰といった事態は、これからも想定しておく必要があると思います。

さらに今後は、資産の実質的な価値を下落させるインフレも想定を超えた大きさになる可能性があります。

規制・税制変更は突然やってくる

政府の規制や税制の変更によって、資産価格が大きく影響されることがあります。

例えば、資産の海外への持ち出しに対する規制や、保有資産に対する資産税のような新しい課税といった、想定外の変更が突然発生するかもしれません。

また、確率は低いかもしれませんが、預金封鎖のような、個人財産の移動に制限がかけられる事態も考えられます。

あり得ない事態として排除するのではなく、少しでも可能性があることは、全て考慮しておくことが大切だと考えます。

日本にも存在する地政学リスク

台湾有事は、米国政府が具体的なシミュレーションを始めるほど実現可能性の高い脅威となりつつあります。

また、北朝鮮のミサイル開発による軍事的脅威も日本にとっては大きな懸念です。

万が一、日本国内に対して、海外からの軍事的な脅威が顕在化すれば、国内不動産や株式・為替・金利市場にも極めて大きな影響が出ることは間違いありません。

日本国内に資産を集中させておくことは、日本の地政学リスクによる影響を大きく受けてしまうことになるのです。

天災は忘れた頃にやってくる

日本は火山国ですから地震や火山噴火のリスクを抱えています。首都圏直下型地震や南海トラフの動きは気になります。また、富士山の活火山化の可能性もゼロではありません。

都心部には今も木造住宅が密集したエリアが残っています。地震に伴う火災に対して、極めて脆弱です。

さらに最近では気候変動の影響もあってか、竜巻や台風などの異常気象が世界で頻発するようになっています。

先日、多くの犠牲者を出したトルコの大地震のような大震災は世界中で発生しています。阪神淡路大震災や東日本大震災のような惨事は、いつ再び起こっても不思議ではありません。

自分自身へのダメージも忘れてはいけない

前述の外的要因だけではなく、自分自身に心身のダメージがあった場合のことも考えておく必要があります。

有事になってから、その対応を考えても冷静な判断ができず、手遅れになってしまいます。万が一のことがあった場合、自分が保有している資産を誰がどのように管理していくのか。相続や事業承継を含め、平時から自分がいなくなった時のことを考えておくべきです。

私が大切にしている言葉に「賢人は、最善を望みながら、最悪を覚悟する」というのがあります。

平時の余裕のあるうちに、様々な最悪の事態を想定し、それらに対する対策を立てておく。その上でリスクコントロールしながら、リターンを狙う。

想定外の事態が発生した時に、慌てず対応できるような体制を今からしっかり作っておきましょう。