みなさん、こんにちは。年明けはどうなることかと思った株式市場ですが、徐々に上昇基調に転じてきました。金利も先高感は否定できませんが、懸念された急ピッチな利上げは、どうやらなさそうという感触から安堵感が広がったものと受け止めています。

やや慎重に相場を見てい私からすれば、そこまで大きな影響はなかったというところでしょうか。ただし、これで底打ちしたと考えるのはまだ早計のようにも思います。引き続き、私は上値を追うというよりも、安値をコツコツと拾う「仕込み」局面のスタンスを継続したいと考えています。

金融政策の正常化観測から注目が高まる銀行株

さて、今回は「銀行株」をテーマにあらためて採り上げてみましょう。前々回の本コラムで「金利」を採り上げた際、「銀行株も要注目」と指摘しました。銀行はこれまでのゼロ金利政策によって、利ザヤ収入が期待できない状況が続いてきました。それが、金利上昇観測の台頭により、融資で稼ぐ局面が復活することへの期待が一気に高まるというシナリオです。

金融政策が正常化するにつれて、銀行が銀行としての本来の機能を回復していくと考えれば、銀行株への注目度が上がるというのは理に適ったものと言えるでしょう。実際、東証の業種別株価指数において、銀行株は日銀の金融政策スタンス変更を受けた12月半ばから急騰しています。

また、今後は4月に任期満了となる日銀総裁の交代と相まって、金融システムの正常化観測(つまり、金利の引き上げ)がさらに高まるとすれば、銀行株への注目度がさらに高まる可能性は十分あるのではないかと考えています。

銀行株を見極めるポイント

バリュエーションと経営体質

では、個別銘柄としてどのような銀行を選択するのがよいでしょうか。まず考えられるのは、金利の上昇局面という追い風は、押し並べて全ての銀行に恩恵を与えるということです。すなわち、全体水準の底上げが進むということに他なりません。

そうだとすれば、これまであまり高く評価されていなかった(=バリュエーションが低位に放置されていた)銀行が、相対的に最も大きなインパクトを受けることになると予想します。株式投資においては、誰もが認める良い会社の株式を選択するよりも、評価と実態に乖離のある企業の株式を選択する方がパフォーマンスがよいことも多々あります。追い風が吹き始める中、過小評価されている銘柄への投資の魅力が高まってくるのではないかと思います。

ただし、これまで高く評価されてこなかったことには、当然それなりの理由がある可能性を軽視してはいけません。投資を決断する前に、なぜ、当該企業が低バリュエーションのまま放置されていたのかを考えることは重要です。きちんと、追い風を受けることができる経営体質なのかどうかを見極める必要があります。

地銀業界の再編が進むなか、より競争力のある企業の魅力が増す

次に考えることは、全体的な底上げが進んだ後、一定の水準を超えると、より競争力のある企業への注目度が高まってくるという流れです。

特に、オーバーバンキングや地方の資金需要低迷といった構造的な問題を抱える地銀業界では、少々の本業の改善があっても問題解決には至らない可能性があります。むしろ、本業の回復は業界再編が加速するきっかけになると考えられます。

1月下旬に報道された、横浜銀行による神奈川銀行の買収などはその好例でしょう。長年不可避と予想されていた地銀再編ですが、2022年にプロクレアホールディングス(青森銀行+みちのく銀行)(7384)、あいちフィナンシャルグループ(愛知銀行+中京銀行)(7389)、八十二銀行(8359)による長野銀行(8521)の子会社化、ふくおかフィナンシャルグループ(8354)による福岡中央銀行(8540)の完全子会社化など、徐々に再編の動きが加速してきました。

今後、こういった動きが加速し、全国的に拡大することとなれば、再編の核となる銀行への投資の魅力は増すのではないでしょうか。おそらく、規模的にも経営効率的にも相対的に余裕のある銀行が、再編において大きな役割を担う公算が大きいと考えています。

なお、独立系地銀の預金残高上位には横浜銀行(コンコルディア・フィナンシャルグループ)(7186)、千葉銀行(8331)、福岡銀行(ふくおかファイナンシャルグループ)(8354)、静岡銀行(しずおかファイナンシャルグループ)(5831)、北洋銀行(8524)が名を連ねています。

メガバンク、海外の大手銀行に追いつける戦略か

一方、メガバンクはどうでしょうか。こちらも業界底上げのメリットを受けるのは当然ですが、その後は地銀とは異なり、徐々にそれ以上にネットバンキングや海外展開への取り組みで、より明確に選別されるものと予想します。既にメガバンク間でも、フィンテックへのアプローチや店舗戦略、ひいては収益性などでかなり明確な違いが出てきています。これらの戦略への評価や実効性が株価を決定づけることになるでしょう。

ただし、ある程度の上昇を果たせば、メガバンクの場合はどうしても海外の大手銀行の株価と比較されることとなります。そこでは2ケタに達するROE(自己資本利益率)を維持する海外の大手銀行と見劣りする感は否めません。メガバンクの掲げる戦略が海外の大手銀行にどれだけ追いつけるものかを見極めることが株価の重要な決定要因になってくると思います。