結論を先送りした日銀の金融政策

日銀は1月17-18日に開催された金融政策決定会合で金融政策の現状維持を決めました。

正確に言うと、今回の日銀のアクションは「決定」ではなく、結論の「先送り」です。
長期金利の上限を0.5%から引き上げることは見送り、引き続き、指値オペで投資家の国債売りに対抗することを決定しました。

確かに、今回もし長期金利の上限を0.75%に引き上げてしまえば、市場参加者は日銀が市場圧力に屈したと判断し、国債の売りを続けたかもしれません。そうなると、引き上げの意味はありません。

さらに踏み込んで、長期金利の上限レートをいきなり撤廃すれば、パニック的な売りから長期金利がオーバーシュートしかねません。

結局、何もしないという消極的な結論にせざるを得なかったのではないでしょうか。

日銀の発表を受けて、国債を売っていた投資家が買い戻しを始め、金利は一時的に下がっています。とはいえ、今後再び金利が上昇する可能性は高いと見ています。

共通担保資金供給オペには持続性がない

今回の日銀会合では、新たな施策として、共通担保資金供給オペを機動的に実施できる仕組みが導入されました。

これは金融機関から担保を受け取って、日銀が低利でお金を貸し出す制度です。民間金融機関にも国債を購入させることにより、金利上昇を抑えるのが目的です。

しかし、これも持続性があるかは不透明で、日銀の代わりに民間が国債を購入しているという点で実質的には何も変わっていません。

イールドカーブコントロールが撤廃されるタイミング

国債のイールドカーブを見ると、10年ゾーンが大きく下がり歪んだままです。この問題は根本的に解決されていません。

イールドカーブコントロール(YCC)を他の年限に広げて全体の金利を引き下げる方法も考えられますが、より大量の国債購入を行うことになってしまい、限界があります。

私は、早ければ黒田日銀総裁が退任する前後のタイミングでイールドカーブコントロールが撤廃されるのではないかと見ています。そうなれば、長期金利は10年ゾーンだけではなく、全体的に上昇することになります。

マイナス金利政策もいずれ修正される?

イールドカーブコントロールだけではありません。政策金利がマイナス金利から引き上げられるのではないかという観測も市場で高まっています。

インフレ率や雇用情勢データによって、判断時期は変わると思いますが、景気に悪影響が出ないと判断すれば、金融政策の正常化に向けて決断する可能性はあり得ます。

ただし、消費者物価指数が上昇しても賃金上昇率等が改善しなければ、本格的なインフレの持続は難しく、利上げには動けないというのが日銀の見方です。

賃金データが判断の鍵になると思います。

日本国内の金利上昇とインフレへの備え

これから日銀が金利上昇を容認すれば、日銀の保有する500兆円を超える国債の評価損が膨らみます。金融機関の保有する国債などの債券にも同様の悪影響が発生します。

また、1200兆円の累積債務を抱える日本の財政にも今後の資金調達コストの上昇により、マイナスの影響が出てきます。

金利の上昇によって、中央銀行や国の財政に対する信用が毀損されれば、日本円に対する信用力も低下し、通貨価値の下落が発生します。

現在起こっているのは、コストプッシュインフレと呼ばれる物価上昇ですが、長期的には通貨価値の下落によるインフレの可能性が高まるのではないでしょうか?

日銀の債務超過懸念や日本の財政赤字の拡大は、もはやそのようなインフレでしか解決することができません。

日銀の出口戦略は自らが選ぶのではなく、コントロールできない市場の変化によって決まってしまう、そんな袋小路に入り込んでしまっています。

今後、日本の個人投資家が直面する大きなテーマは、日本国内での金利上昇とそれに伴うインフレへの対処です。

そのための具体的なアクションとして、インフレに強い資産を保有し、お金を借りる。そして日本円だけではなく、外貨資産もバランス良く保有することが大切です。