いかに相場というものがその時の空気と勢いによって成されているかということですね。こうした相場の場合、実質経済の改善や回復が裏付けにあるわけでもありませんし、トレンドにうまく乗り、逃げ切れるかという短期的かつタイミング重視のものになりがちです。なんだか上昇している!・・と後から追いかけると、大抵の場合、うまくいくものではありませんので、ご注意ください。
さて、前述した政策期待による「長期金利低下」。個人投資家に馴染みのある為替や株式の相場と違い、長期金利、国債となると主にプロの市場であるだけに、その相場はイメージしにくいものでしょう。ですが、各市場は長期金利の相場とも密接に関係していますから、その動きは無視するわけにはいきません。
金利上昇には良い金利上昇と悪い金利上昇の2種類あることはご承知の通り。・良い金利上昇:景気回復/上昇において、企業等の投資意欲上昇、株価上昇期待から債券が売られ=金利上昇(株式へのマネー移動)が起こるというもの。景気上昇→インフレ方向
・悪い金利上昇:景気悪化に伴い、国の財政出動等景気刺激策が必要となり金融緩和方向へ=金利上昇となるもの。景気悪化→デフレ方向
今回の米国発長期金利上昇は株価上昇も伴う、「良い金利上昇」と見られています。政策期待については法人税大幅減税や巨額のインフラ投資(=財政出動)等の公約への期待ということで、財政出動といっても景気悪化時の景気刺激のためではないだけに、景気回復によるインフレ加速という見方が長期金利の後押しになっています。
一般に先進国においての金利上昇は新興国においての財務不安や急速かつ過激なインフレ懸念とは異なるケースが多いものの、過度なインフレが起これば、住宅ローン金利の高騰などによる個人の家計への打撃は起こりえます。また消費物価の上昇に給与収入の増加が伴わなければ同様にマイナスの影響となります。
ここ何年も先進国は超低金利の中にありましたが、そもそも中央銀行は「インフレ・バスター」とも言われ、常にインフレとの闘いが前提というのが本来の姿でもあるのです。
長期金利が不安定の場合、経済を中長期で見たときに不安要因になりますので、長期金利が安定的プラス方向に動くこと、そして現在の株式市場の賑わいが勢いだけのものにならないことを願います。
廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー
CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員