先週、「まさトラ」と書いたことが現実になってしまいました。驚愕でした。ブリグジットの時のショックも相当なものでしたが、今回は悪夢を見た思いでした。2016年、世界は閉鎖的で不透明な方向に舵を切ってきたように感じます。

それほどまでに米国は分断され、中低所得者層の怒りが強かったということでしょうか。日本の貧困率は先進国(OECD加盟国)中、米国の3位に次いで4位という事実なだけに他人事ではありません。
教育を受ける機会もなく、仕事もなく、日々の暮らしにも困窮して、ひたすら現状の不満だけが鬱積してしまっているような状況で、誰か(移民等)のせいにすることを声高に煽り立てる人が登場すれば、変化を信じてすがりたくなってしまうということでしょうか。今回の選挙結果の要因について、様々なところで「怒り」と説明していますよね。もう一つ、若年層に見られるのは「面白さ」もあるようです。
「なんか変なことを言う金持ちのおじさん、面白いかも・・・」
といったところでしょうか。扇動的で刺激的な暴言の数々。面白ければいい、という考えの人にも効果的だったようです。

トランプ氏の掲げた公約は実際のところはとても実現不可能に思えるものだらけですが、人々の心理的な部分では移民排斥などの悪影響がすでに出ているようです。
選挙結果が出た瞬間の株の暴落、翌日のV字回復、と市場は大きく動揺しました。V字回復はトランプ氏の政策への期待と言われていますが、前述通り政策にどの程度具体性があるか不透明な上、その閉鎖的、保護主義的な方針を示されるだけで市場は反応しやすくなるでしょう。
今後については悲観論から楽観論まで色々と出ていますが、ここのところ専門家、知識層と呼ばれる層の考えや統計が残念ながらことごとく裏返されてしまっています。まさに分断されたもう一方の層にいる人々による発言ですから、考え方の基本的な部分から異なっているため、想像しきれないというのが現実なのでしょうか。
これからの世の中の動きについても、個人的には今しばらく様子見をしたい気がします。

今回、私たちが目にする識者、専門家によるコメントや統計結果が偏っている可能性があること、そのため世の中の動きが「想定外」になりえることを再認識しました。市場参加者は上記「もう一方の層」の人々(コメントや統計を出す方と同じ側)が主だと思いますし、そうした「想定外」に振り回されることは今後も十分にありえます。「見える範囲の情報」に安心はできないということですね。
リスクヘッジについてはこれまでも十分に注意することをお伝えしてきましたが、より一層の備えが必要になりそうです。

トランプ氏が意外にまじめに取り組んで、「意外にも良い大統領」となってくれるという嬉しいサプライズを世界中の人が希望していることは間違いありませんね・・・。
廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー
CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員
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