「配偶者控除」が廃止される方向です。
この制度は専業主婦やパート勤務の妻がいる場合、パート収入であれば年収103万円以下の時、夫の所得税から38万円が税額控除され、夫の税負担が軽くなるというもの。パート収入が130万円以下であれば妻は扶養家族として国民年金、健康保険も保険料を支払わなくて済みます。
正社員の女性からすると、専業主婦(パート主婦含む)は優遇が多くていいなぁと感じている方も少なくないでしょう。

そもそも配偶者控除が制定されたのは1961年。夫がサラリーマン、妻は専業主婦、子どもは2人という家族モデルが多数を占めていた時代ですね。夫婦の役割分担が明確で、外では仕事をしないけれど夫を支えている妻に報いるために税軽減措置として生まれた制度というわけです。
ところが1990年代半ばを境に共働き世帯数が片働き世帯数を追い越し、共働き世帯が増えるのと反比例して片働き世帯は減り続け、2010年には共働き世帯は片働き世帯の3割増しほどにもなっています。

1970年代半ばより、20代後半~30代前半女性の就業率が一貫して増え続けたことが要因です。これは30~40年以上前から女性労働で問題視されたM字カーブが確実に緩くなってきていることも意味します。
ただその働く理由は80年代バブル期のような「自己実現を求めて」といったものより、圧倒的に「生活のため」という切実なものです。
若い男性が「結婚できない」と思う理由の第一位は「金銭的・経済的理由」とのこと。
20~30代の会社員の年収がなかなか伸びないという現実があり、「養うなんて無理」「共働き前提」という男性が多いのも事実です。

このように「共働きは当たり前」時代へ変わり、それは優秀な女性が数多く労働市場に存在していることも意味します。ただ残念ながら「内助の功の妻のための制度」であるはずの「配偶者控除」を目いっぱい利用するため、パート勤務の優秀な女性が年末近くなると労働時間を調整して年収が103万円以下になるようにしているのです。

政府が配偶者控除を撤廃する代わりに夫婦控除の導入を検討しています。夫婦控除になると妻の年収額に関わらず、一定の金額を家計の主となる夫の所得より控除するというもの。
前述のように夫の年収が伸びず世帯収入として妻の収入はもっと欲しい、けれど103万円を超すとかえって税額が増えて損をする・・・という世帯にとっては妻の年収額にとらわれずに所得控除されることは朗報のはず。ただ夫の所得制限はあるのか、どの程度の控除額になるか等により、現状よりも負担が増える世帯も出てくる可能性は高いとのこと。また、130万円を超えると妻に社会保険料がかかってくる、という壁は依然として残っています。こうした壁を取り除かない限り、「女性の社会進出を促す改正」にはなりきれませんね。

廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー
CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員