<< <<【前編】累積利益5億円達成!資産バリュー株投資の真髄

――現在保有している銘柄数はどのくらいでしょうか?

戦略的に投資している銘柄が17銘柄、株主優待目的で持っている銘柄が36銘柄です。投資単位も保有期間も異なるので、戦略的投資銘柄と株主優待銘柄で、保有する口座を分けて管理しています。

株主優待を目的に持つ銘柄は、特別な材料が出て大きく上がったときには売る場合もありますが、基本的には値上がり益を狙っているわけではありません。一方、戦略的投資銘柄については、コアもサテライトも含めて常に次の投資対象の候補となる企業を探しています。同じ証券口座にあると判断が鈍るので、あえて分けて管理しています。

株主優待で家計を節約し、浮いたお金を投資に回す

――株主優待銘柄は、どのような基準で銘柄を探していますか。

株主優待銘柄は、自分自身がよく利用するお店を基準に選んでいます。百貨店やスーパー、外食などが中心で、クオカードなどの金券もありますが、基本的には、それを持つことで、日常生活のコストを下げられる銘柄を選んでいます。優待利回りが高いからという理由では選ばないですね。もらっても使わない優待品を提供している銘柄は買いません。

例えば、イオン(8267)は、100株以上保有すると「オーナーズカード」(株主向け優待カード)がもらえて、3,000株保有すると買い物した金額の7%がキャッシュバックで戻ってきます。よくイオンを利用する人ほど優待利回りも高くなりますし、返金分を次の投資に回すことができますよね。我が家は家族で投資をしており、それぞれの優待を使って外食するので、外食による支出はかなり節約できています。

――株主優待を活用して家計を節約できるのはいいですね。

その通り。僕の中での節約は、単純に物を買わないということではなく、現金ではなく優待券を使って購入したり、買う時期を工夫したり、何度も検討して本当に必要なものを見極めることです。衝動買いは禁物。これは株を買うときにも共通する部分が多いですね。無駄遣いを減らすことで余ったお金を投資に回すことができれば、無理なく投資資金を増やしていくことができるのではないでしょうか。
また、BtoC(一般消費者向け)の企業の場合は株主優待を活用するときに投資先企業の「現場」を自分の目で確認することができます。実際に外食や小売店のお店に足を運ぶと、「最近、お客さんが減っている」とか、「相変わらず流行っているな」などの変化に気づくことができると思います。もちろん、決算書や『会社四季報』(東洋経済新報社)をチェックすることは大切ですが、そこに書かれているのは、いずれも過去の情報です。でも、お店に行けば、今現在の最も早いリアルな情報を体感することができます。

リアルな情報に接することは、今後の投資の判断材料にもなります。日常生活のなかで、アンテナを高く張って、気づいたことをチェックする。株式投資は、そのような連想ゲームのようなものだと思っています。

――お母様や奥様も株式投資で「億り人」になられたそうですが、やはり身近なところからヒントを得て投資を始められたのでしょうか?

そうですね。母の株式投資パフォーマンスは元本の110倍、かみさん(妻)は60倍になっています。父は家族の中で一番儲かっていませんが、それでも元本の8倍にはなっています。

母やかみさんを見ていると、女性独自の視点で身近なところから投資のヒントを得るのが上手いなあと感心させられます。母は、化粧品の訪問販売の会社で働いていたこともあり、化粧品関連の売れ筋などを見抜いていました。母が投資をした中で最初に大きな利益を上げたのはファンケル(4921)でした。当時としては珍しい無添加化粧品を販売していて「敏感肌の女性が多いから売れるだろう」と考えて上場直後に株式を買い、結果的に株価は僅か1年で5倍以上の値上がりとなりました。

かみさんは「ヤクルト1000」が人気になる前から注目して、ヤクルト(2267)の株を買い、買値の2倍近くになりました。僕のバリュー株投資の基準からすると、どちらの銘柄もPER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)が高すぎてとても買えない(苦笑)。投資の基準は違っても2人とも大きな利益を得ています。それが株式投資の面白いところです。何に着目して買うかは、家族みんなバラバラです。ただ、共通している部分もあり、1つには良い時でも悪い時でも投資を続けるということ、そして自分なりの根拠がきちんとあって株を買っていることですね。

「現場主義」で企業を徹底分析

――銘柄分析は、どのようにされていますか?

自分が納得するまで調べるようにしています。例えるなら人にお金を貸すときと同じような感覚です。他人に「お金を貸して」と言われて、身元も調べずに貸す人はいないでしょう。貸す相手について徹底的に調べるはずです。

株を買うことは、企業にお金を託すことに近いと僕は考えています。だから、自分が納得できるまで徹底的に調べてからでないと投資はしません。決算短信や有価証券報告書を見て、不明な点があればその企業のIR部門に電話して質問したり、不動産を持っている企業ならば現地に足を運んで、企業の評価通りの価値があるかどうかを実際に見に行ったりします。そのうえで、例えば「工場を閉鎖したあとでも、この土地なら住宅地やショッピングモールに転用できるから仮に工場を閉鎖しても不動産賃貸収入が見込める可能性がある」など、自分なりのストーリーを描くときもあります。

――開示情報を見るだけでなく、現場を知ることも大事ということですね。

そうです。だから、経営陣の声が直接聞ける株主総会にも積極的に参加しています。株主総会での発言は議事録に残るため企業もいい加減なことは言えないでしょう。真摯な回答が期待できる機会だからこそ、事前に考えておいた質問内容を株主総会では問いかけるようにしています。僕はいつも、株主総会に参加するときは質問する前提で参加します。ですから大企業の株主総会だと質問しても当てられない可能性もあるため、僕が参加する株主総会は時価総額の低い小型株の会社が多いですね。

自分が割安だと思って投資していても、その基準が間違っているかもしれません。現預金をたくさん持っている企業でも、株主にお金を還元しないような会社は、市場からもなかなか評価されません。だから、ROE(自己資本利益率)が極端に低い会社には、「資本コストを考えて経営していますか」と質問しますし、内部留保が多い会社には「従業員の給料を上げるべきだと思いますが、どうですか?」といった質問をします。単純に配当を出してほしいという株主としての目線だけで質問するのではありません。会社は従業員と経営者、株主、顧客がいて成り立つものだと考えているからです。

――株主総会で質問された時の経営陣の反応はいかがでしょうか。

質問内容によっては、「えっ?」という反応が返ってくることもあります。でも、株主の声を聞いて変わる会社も実際にあります。株主の意見を取り入れて、資本政策や配当政策が見直されたケースもあります。僕は、投資家の役割として、資本効率が悪い企業に対して有効なお金の使い方を会社に対して提案をすることにあると思っています。投資家による適切な提案は、過剰な内部留保を動かす、良いきっかけになると考えています。

大幅な減配リスクがないことを重視

――年間800万円以上の配当金を得ていらっしゃるそうですね。配当枠として保有している銘柄があれば教えていただけますか?

配当自体を目的として投資している企業はあまりありません。ただ、割安な銘柄が配当性向を高めたり、配当性向が20%以下だった会社がDOE(株主資本配当率)を2%にするなど、株主資本を意識した配当政策に変更した時などは市場からの評価も大きく変わる可能性があるので、投資対象として検討することがあります。

最近では、バイタルケーエスケー・ホールディングス(3151)の配当方針がDOE(株主資本配当率)を2%以上、自己株式取得は業界最高水準のPBRになるまで継続するなど、具体的かつ目的がはっきりした内容だったこともあり、新規に投資することにしました。三井倉庫ホールディングス(9302)は、配当性向を30%に上げたことにより、大幅な増益も相まって配当額が大幅に上昇したことや、保有している賃貸不動産の評価額が簿価より何倍も高いことに注目しました。資産を現金で持っているか、不動産で持っているかの違いですが、どちらかと言えば不動産のほうがインフレに強いので、インフレの時代にはよいと考えました。この2社については、バリュー株投資+配当などの株主還元も考慮した上で保有している銘柄です。

配当に関しては、大幅な減配リスクがあるかどうかも重視しています。配当は高いほうがよいと思っている人もいるようですが、仮に配当性向が100%だとしたら、さらに利益が増えない限り配当は増えません。その一方で、利益が減ったら減配せざるをえないでしょう。配当利回りが8%を超える企業の場合は、配当の継続性にも注意を払った方がいいでしょう。

その点、利益に対する配当利回りではなく、DOEのような基準の場合は株主資本が大きく毀損しない限りは減配のリスクがないので大幅に株価が下落するリスクは低いと考えることができます。

銘柄を選ぶ際は、まず資産内容を見てPBRが低いかどうか、配当性向が20%未満と低く、伸びる余地があるか、などを確認したうえで、配当利回りを見るようにしています。

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※本インタビューは2022年12月7日に実施しました。
※本内容は、個人の経験に基づく見解であり、当社の意見を表明するものではありません。
※投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようにお願いいたします。