某生命保険会社のテレビCMで、突然倒れたらしい病院にいる西島秀俊さん演じる夫のもとへ、幼い子どもを連れて妻である渡辺直美さんが駆け込んでくるというものがあります。ご存知でしょうか?イケメン夫にぽっちゃり妻という対比は面白いのですが、その会話は面白いというよりは、ある種の厳しさと悲哀を感じます。
妻:あなたっ!!

夫:ごめん、直美。大したことないって。

妻:よかった~。
ここまでは夫を思いやる妻、という感じがするのですが、

妻:もし、あなたに何かあったら、私たちどうなるの?

と、突然心配は夫自身ではなく自分たちの生活の方だと訴えます。医療保険に入っているから大丈夫という夫に対し、

妻:医療保険は治療費しか助けてくれないじゃないの!(住宅)ローンとか子どもの教育費とかはどうするのっ!??

と病院のベッドにいる夫に対しては酷過ぎる気がしてしまいます・・・。とはいえ、ある意味現実を突いています。上記のようなリスクは特に専業主婦には大きなものなのです。

ライフプランニングでは「万が一のリスク」に備える必要性を話します。「万が一」とは主となる稼ぎ手の死亡リスクで、残された家族のための死亡保障をどうするか等がポイントとなります。
ただ、現実には短い入院で済む病気や怪我、もしくは死亡のどちらかだけではありません。長期に渡る入院、介護が必要になる状況、失職せざるを得ないケースもあるでしょう。死亡保険でも高度障害になったのであれば、死亡保障と同じく保険金が支払われ、住宅ローンにおける団体信用保険も同様です。
ただ、この高度障害状態の定義は大変厳しいものですから、例えば完治する可能性が高いが数年かかるかも・・・といったような病状は対象になりません。
となれば、まさに冒頭のCMの「妻」の心配事は実際かなり的を射ています。
一般に、失職した場合に備えて、生活費の6カ月分(3カ月分という説もありますが、個人的には6カ月の貯えは必要と考えています)を流動性資金で準備しましょう、と話しますが、上記のような場合はとても6カ月分では間に合いません。
そのために「所得補償保険」を活用するのも一つです。被保険者が病気や怪我で働けなくなった場合の収入減を補う保険です。ただし保険に加入するということは、保険料を支払うということです。十分な備え(貯え)をすでに持っている、保険料分を運用に回すことで、ご自分で準備できそう、ということもあるかもしれません。やみくもに保険に入るのではなく、資産状況を確認しておくことが大前提です。

なお、所得補償保険は、以前は損害保険会社が扱うのみでしたが、冒頭の「給与サポート保険」、また「就業不能保険」という名前で他の生命保険会社からも販売されています。期間や条件等異なりますので、興味のある方は中身を比較されてみると良いでしょう。

廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー
CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員