たとえば、ごく普通の家庭出身、高学歴の女性が結婚・出産で専業主婦となり、その後離婚。元夫が約束した養育費を払ってくれなくなった・・・珍しくはない話です。
無職期間が長く、特に資格や技能を持ち合わせない40代が正規雇用の働き口を見つけることは難しいものです。平成27年の厚生労働省のデータによると女性の平均賃金は24万2000円、ボーナスを考えないと年収300万円を切ります。地域、業種により差がありますが、中小企業で非正規雇用となれば、月の手取りが10数万円つまり年収で200万円を切ることは多く、それで家賃・生活費を払い、子どもを養い、学校に通わせるのです。子どもには習い事も塾通いもさせられない、高校に通わせるのも難しい・・・着る物、食べる物も満足に得られない、など子どもは貧困スパイラルに向かう可能性が高まります。
近くに実家がありサポートが受けられる、元夫との財産分与により、まとまった預貯金がある、住むところが確保されている・・・などであればもちろん状況は異なります。
実は先日、学生時代の友人たちと「女子会」をしたのですが、その時に出た話題が引っ掛かっていました。
シングル、バツイチ等様々で「子どもが二人の専業主婦」という国が考えるモデル世帯に当たるのは8人中1人のみ、多くがバリキャリというあまり可愛げのない集まりです。子持ちで総合職キャリアを続けているというツワモノが「離婚したい」と。本気かどうかは別にして、そういったメンバーですから、「いやなら別れてしまえ!」と強気の意見も多かったのです。
確かに彼女の場合、同世代男性並みの収入があり、子どもはもうそれほど手がかからず、子育て・家事はこれまで彼女が一手に引き受けて(そのこと自体が驚嘆ですが)きていたので、生活はほとんど変わらないというのです。
共有名義の居住している不動産等の財産分与がスムーズにでき、一定の養育費を受け取れるようであれば、「精神的ストレス」を軽減できる、ある意味「理想的な離婚」になるかもしれません。
その時、前述のようなバツイチによる貧困化は全く想像しませんでした。この二例、何が異なるのか・・・鍵となるのは「仕事」=経済力です。
女性も経済力を持つことで、選択の自由が広がります。そうでなければ安易な、勢いによる選択をすることは悲劇を招くことになりかねません。
女性の労働力率である「M字カーブ」は、様々な理由から昨今緩やかになってきていますが、女性も自身の経済力(収入を得ることでも、資産を大きくすることでも)を持ち続けるか否かで人生そのものも大きく変わる可能性があるといえそうです。
廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー
CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員