相場について勉強を始めると、ファンダメンタルズに注目した場合の教科書的、基本的な動きを学びます。経済指標の発表や、イベントが起こったとき、以下のような例が載っていることでしょう。

・失業率が下がった→好感→株価上昇・通貨高

・景気上昇時の利上げ→通貨高・株安

ところが実際に相場と向き合ってみると、全く異なる反応に直面することもしばしば。これが市場の面白いところであり、複雑なところです。
相場は一つの要因だけで動いているとは限りません。参加している投資家の思惑が流れを決めていくことがほとんどです。投資に勉強は必須ですが、勉強しているだけでは実際の相場がわかるとは言えません。痛い目にあい、それを授業料と思い、日々相場と向き合っていく経験からさまざまな気配を感じてくることもあると言えます。

さて、そんなセオリー通りとは言い難い相場展開はよくあるものですが、初心者にとっては思わず?と感じてしまうかもしれないニュースが先週にもありました。
先週金曜日、投資家が注目していたのは日銀の金融政策発表です。
日銀は追加金融緩和を決定。ご存知の通り、金融緩和策というのは利下げと同様、景気刺激策です。つまり通貨安・株高(日本は円安=株高の傾向)になるのが教科書的反応であり、過去の「黒田バズーカ」でもそうした動きをしてきました。日銀もそれが狙いのはずでした。ですが、今回ドル/円は乱高下の後、大きく円高に振れました。ところが日本株は乱高下の後、プラスで終わるという結果に。
報道では「金融緩和策に失望感・円高」でしたね。

景気刺激のために金融緩和策を決定したのに失望?
政策に失望したのにその国の通貨が買われる?
円高なのに株高?

と、教科書的には三重に理解に苦しむ点があったかと思います。
こうした事態には、まずはこれまでの市場の「お約束」を知っておくことが大前提になります。
・市場は何かある前には必ず予測をする

・期待に合わせポジションを傾ける

・期待の度合いで結果を判断する

・株式と為替は必ずしも同じ反応はしない

つまり今回、市場はより大きな策を期待しており、発表後「期待外れ」「政策の限界」と感じたために為替はセオリーとは逆に動いた、株式は為替とは別の要因で動いた(量的緩和部分ではなく、マイナス金利拡大なしの部分)ということ。

初心者は、なぜそういう動きをするのかという相場分析→理解を繰り返して、少しずつ慣れていくことが大切なステップと言えるでしょう。

廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー
CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員