長期金利の上限を0.5%に
日本銀行は12月20日の政策委員会・金融政策決定会合において、「緩和的な金融環境を維持しつつ、市場機能の改善を図り、より円滑にイールドカーブ全体の形成を促していくため、長短金利操作の運用を一部見直すことを決定」しました。
長短金利操作の運用において、国債買入れ額を従来の月間7.3兆円から9兆円に増額しつつ、長期金利の変動幅を従来の「±0.25%程度」から「±0.5%程度」に拡大しました。なお短期金利はマイナスを維持、ETFなど長期国債以外の資産買入れについては変更なし、フォワードガイダンスにも変更はありませんでした。なお決定は全会一致でなされました。
今回の変更について公表文によると、海外の金融資本市場のボラティリティの高まりにより国内債券市場でも各年限間の金利の相対関係や現物と先物の裁定などの面で市場機能が低下しており、企業の起債や金融環境に悪影響を及ぼす惧れがある、との認識に立つものです。
これまで日銀の金融政策は2016年に長短金利操作が導入され、その後0.2%の変動幅導入、0.25%への拡大、そして今回0.5%への拡大です。緩やかに市場機能を取り戻す方向にはあるものの、このタイミングでの政策変更については当局者から事前に市場への対話が無く、全くのサプライズとなりました。
12月20日の前場の株式市場はプラス圏で小動きでしたが、午後は急落し日経平均で前日比669円安(‐2.5%)、マザーズ指数は‐4.7%とより大きなインパクトを受けています。また金利敏感な銀行・保険株が急騰するなど物色の変化も見られました。米ドル/円は137円台から132円台へ円高進行、0.25%であった10年金利は0.44%まで急騰しました。
緩和スタンス維持に変更はなく、市場機能の改善を図ることが目的
記者会見で黒田日銀総裁は今回の政策変更について、金融緩和の効果がより円滑に波及していくためのものであり、金融緩和の出口に向けた動きを明確に否定しました。
緩和スタンス維持に何ら変更はなく、市場機能を重んじた対応として金利の裁量を限定的に変更したものであり、持続的な動きを促すものではないと言えます。市場も水準変更を余儀なくされましたが、更なる動きに警戒というよりは変更後の水準から落ち着きどころを探る展開が予想されます。
今回景気認識に大きな変化はなく、金融政策のかじ取りが大きく変わったとは考えませんが、コンセンサスだった不動の日銀も動きうる、ということは今後念頭に置く必要があります。また政府・日銀の共同声明についても見直し観測が浮上しているように、政府側からも物価への対応意識が感じられます。
今後新総裁の下でどのような金融政策方針となるのか、様々な思惑が出やすい中で短期的な相場変動には注意が必要です。金融当局者によるしっかりとした市場との対話が望まれます。