2022年は為替レートが大きく動いた1年でした。日本の投資家に一番馴染みのある米ドル/円で見ると、年初1ドル= 110円台だった米ドルは、10月に一時1ドル= 152円近くまで上昇。しかし、その後円高に逆戻りし、現在は1ドル130円台半ばの推移となっていす。

マーケットの注目は、米国のインフレと金融政策

現状、米国のインフレとそれに伴う米国の中央銀行である米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策が、為替マーケットを大きく動かす主な要因です。

米国の急激な消費者物価指数の上昇からインフレ懸念が台頭し、金融引き締めが急速に進み、米国のマーケット金利も全般に上昇しました。そのため、日本との金利差が拡大する状況となり、米ドル/円に対して買われる展開になりました。

日本の金融緩和政策はいつまで続くのか

日本の金融政策は、米国とは対照的に低金利政策が継続しています。

日銀は、現状の消費者物価の上昇は労働賃金の上昇を伴わないインフレと考え、継続性がないと判断しており、金融政策の変更は無いとしています。

しかし、マーケットでは長期金利の上昇圧力が高まっています。日銀は10年国債の金利上限を0.25%程度に設定する、イールドカーブコントロール(YCC)を行い、国債を市場から購入するオペレーションを続けていますが、逆にその弊害も増えています。

また、海外の投資家を中心に日銀が金融政策をいずれ修正し、ある程度の長期金利の上昇を容認するのではないかとの見方が出ています。

もしそうなれば、為替マーケットは円高に振れることになるでしょう。

為替レートを決めるのは金利差だけではない

金利差に注目が集まっている為替マーケットですが、為替レートを決めるのは金利差だけではありません。

中長期的には実需に基づく経常収支の動きや、各国の財政赤字、あるいは地政学リスクなども反映します。日本の貿易赤字は拡大しており、経常黒字幅も縮小しています。これは米ドル買いのニーズを高める要因になります。

また、日本の財政赤字の名目GDP比率は200%を超えるという、先進国では最悪の水準で、金利上昇によるリスクが高まっています。さらに、日本には中国との地政学リスクや、地震による災害リスクなども存在します。

金利差だけで為替取引を行っていると、思わぬ環境変化に足元を救われる可能性があります。

為替レートを予想して売買すべきではない

そもそも、為替レートは複雑な要因で決定するものであり、金利差以外のファンダメンタルズの分析をしても、予想することは簡単ではありません。

短期的には為替の動きはランダムウォークであり、その動きを予想することは、カジノのルーレットで赤か黒かを予想するのと同じようなものです。

為替レートを予測して、売買によって長期的に安定した収益を上げるのは非常に困難だと言えます。

日本人にとって困るのは、円高ではなく円安

私は為替に関しては、アセットアロケーションからアプローチするのが良いと思っています。

日本の個人金融資産は約2000兆円ですが、その90%以上は円資産です。日本人の多くは、資産が円に偏っており、外貨資産の比率を高める必要があるのです。

円高になるか円安になるか分からないのであれば、各々の資産を50%ずつ保有するのが合理的な判断です。

円資産が90%という資産配分は、かなり高い確信度で円高になると予想していなければ正当化できない状態です。

そして忘れてはいけないのは、日本人にとって困るのは円高ではなく円安だと言うことです

円高とは円の価値が上昇する状態ですから、円の資産を保有し、日本円で収入を得ている人にとっては悪い話ではありません。

最悪なのは、外貨資産を保有しないまま円安が進み、円で保有している資産の実質的な価値が目減りしていくことです。

円高は外貨購入を進めるチャンス

その意味で考えると、11月からの1ドル= 130円台の円高は外貨資産を保有しない日本人にとって、外貨購入を進め、外貨資産の比率を高めるチャンスです。

タイミングを考えて集中投資をするのではなく、自分が必要とする外貨比率を計算し、計画的に時間を分散させて、外貨比率を高めていくことが必要だと考えます。

為替レートがこれからどうなっていくかを短期的に予想するのではなく、中長期的な視点から自分の資産を守り、増やす方法を考えていきましょう。そのためには、円貨と外貨にバランスよく資産配分することが重要です。