先週の上海総合指数と深セン総合指数は週末にかけて大きく反発し、香港市場も同様に反発しています。先週の材料はなんといっても中国の製造業景況指数(PMI)です。HSBCが発表しているPMIの10月確報値は49.5となり、9月の確報値である47.9から上昇しています。また、中国物流購買連合会(CFLP)と中国国家統計局が発表している公式PMIは50.2となり、こちらも9月の49.8から上昇しました。PMIは50が景況感の境目となりますが、公式PMIは3ヶ月ぶりに50を上回りました。これらの数字は中国経済の底打ちを示す数字と見なされ、週末の株価が大きく上昇したわけです。

もっとも、上海総合指数や深セン総合指数の出来高を見てみると、それほど大きな出来高となっておらず、まだ確固たる上昇トレンドが始まったことを予感させるものではありませんでした。これは中国政府が思い切った金融緩和や景気刺激策を打ち出してくる可能性が低いと見ている投資家が多いためだと思います。実際のところ、11月2日に中国人民銀行(中央銀行)は経済成長の安定化を優先するとして、経済の下振れリスクに焦点を合わせるとコメントしながらも、地価、労働コスト、資源価格に上昇圧力がかかっており、インフレ圧力は無視できないとも指摘しています。つまり思い切った金融緩和は期待できないということです。

その一方で、香港株は1年3ヶ月ぶりの高値をつけています。香港株が好調な要因は中国経済の底打ち期待もありますが、米国のQE3発表により、資金流入が加速している点も大きいと思います。香港ドルは米ドルとペッグしているため、米国の金融緩和により、香港も金融緩和をせざるをえない状況となっています。というのも、香港金融管理局は香港ドルの対米ドルレートを1ドル当たり、7.75香港ドル以上7.85香港ドル以下のレンジに収まるよう管理を行っているからです。QE3発表後、香港には資金流入が続いています。香港金融管理局は香港ドルのレートを前述の範囲内で維持するために為替市場への大規模な介入を続けています(米ドルを買い、香港ドルを売る)。このようにして香港の銀行システムに大量の香港ドルが流入しており、これが株式市場に好影響を与えています。米国の金融緩和は長期にわたって続くことが明らかになっていますので、香港には引き続き資金流入圧力がかかることになると予想され、引き続き株価上昇が期待できるところだと思います。