みなさん、こんにちは。年末が差し迫った状況の中、期待していた「掉尾の一振」はどうも不発に終わりそうな気配となってきました。
年足では若干の上昇ということにはなりそうですが、概して相場に勢いはなく、勢いが生じても長続きしないという相場であったように感じています。コロナ禍発生からおよそ2年を経て、未だにその影響を克服できていないという状況がそのまま反映されているということなのでしょう。皆様の2021年はいかがだったでしょうか。
寅年の相場格言は「千里を走る」
さて、今回は干支に関する相場格言を取り上げましょう。もうすぐ新年を迎えますが、来年、2022年の干支は寅年です。
前々回のコラムでも少し触れましたが、寅年の相場については「千里を走る」という格言があります。これは躍進というよりも、政治・経済で波乱が起こりやすいという意味で解釈されています。実際、第二次世界大戦以降、過去6回の寅年相場の戦績は日経平均ベースで1勝5敗の大幅負け越しです。
唯一の勝ち星は1986年で、バブル相場の幕開けというタイミングであったという特殊要因を勘案すると、基本的にあまり芳しくない戦績ということが言えるでしょう。波乱が発生したという意味では、まさに格言通りの結果になっています。
2020年、2021年の相場格言を振り返ると
では今年、2021年はどうだったでしょうか。今年は丑年。丑年の相場格言は「躓き(つまずき)」とされています。まだ今年の市場は締まっていませんが、年足では数%程度の上昇という結果になりそうな感触です。
これを「躓き」と取るか堅調と取るかは難しいところですが、春先までは日経平均が3万円を越える局面があったことを勘案すれば、私はやはり「躓き」であったのではないかと感じています。
その前の子年(=2020年)はというと、相場格言「繁栄」に対し日経平均は16%もの上昇となりました。世界的なコロナ禍という逆風が吹き荒れたことを考えれば、まさに繁栄という結果になります。格言は格言だけあって、やはり傾聴に値するものであると言えるのかもしれません。
示唆に富んだ相場格言から学べることとは
実はこういった干支の相場格言を、昔の私はあまり重視していませんでした。いくらなんでも干支と資本市場がリンクするはずはないだろうと高を括っていたのです。率直に告白すれば、私の年代ではそもそも干支を気にすることはまずないため、「昭和の古い年代の人達の発想」という受け止めですらあったのです。
しかし、干支の動物との関連は単なるこじつけであると気づき、これは経験的な景気循環を示唆していると理解してからは、なかなか深い相場格言だなあと思うようになりました。人間の営みはその時々でどんどん変化していきますが、少し引いて大きな流れを俯瞰してみると、実は似たような事象が一定の間隔で繰り返し発生していることがわかります。
バブルの発生はその好例ですし、金融危機も然りです。テクノロジーの進化や社会意識の変化は劇的なものではありますが、景気動向など人間の心理などがかかわることに関しては大まかに一定の間隔でしっかり循環しているということが確認できると考えています。
相場格言から考える2022年の投資戦略
仮に、寅年の傾向に変化がないとすれば、日経平均は軟調な推移になるということになります。すると、理論上はずっと買い持ちをしていると含み損が減少する(あるいは、含み損が拡大する)ということになりかねません。投資戦略としてはしっかりと利益を確定し、安値での再エントリーを狙うという基本の実践がより重要になってくると言えるでしょう。
同じように相場格言で考えるとすれば、「利食い千人力」、そして「見切り千両」というアプローチです。ただし、これは株価を小まめに見て判断しなければならない手法であることを忘れてはなりません。是非、ご注意ください。
なお、敢えて嫌なジンクスを申し上げれば、過去、寅年には朝鮮戦争、キューバ危機、チェルノブイリ原発事故、ロシア危機、ギリシャ危機など、世界史に残る大事件が起こっています(ただし、大事件は随時起こっているので、気にする必要はないという捉え方もあります)。過度な心配は禁物ですが、備えあれば患いなしという姿勢で2022年に臨みたいところです。
なお、気が早いですが、再来年の2023年は「跳ねる」年になります。これも前々回のコラムで触れましたが、私は2022年を「再始動への産みの苦しみの1年」と位置付けたいと思います。
ちなみに、十二支それぞれの相場格言は次の通りです。繁栄(子)、躓き(丑)、千里を走る(寅)、跳ねる(卯)、天井(辰)、天井(巳)、尻下がり(午)、辛抱(未)、騒ぐ(申)、騒ぐ(酉)、笑い(戌)、固まる(亥)。是非、みなさんの長期の投資スタンスを考える上での参考にしていただければ幸いです。