地震報道以外で、世の中を賑わしているものに「パナマ文書」があります。「パナマ文書」というのはオフショア金融センターを利用している企業や個人の詳細な情報が書かれているリストで、その内容がパナマの法律事務所から流出、そこに著名な政治家等の名前があったことで騒動になっているのです。アイスランドの首相が辞任したり、キャメロン英首相やプーチン露大統領の身辺でも取沙汰されている問題です。

世界には「タックス・ヘイブン」と呼ばれる、課税が著しく低い、もしくは免除されている国や地域が存在します。カリブ海の島々等に多く点在し、産業が未発達なエリアにおいて、貿易拠点になることを目指して導入した制度ですが、実際には貿易というより国際金融取引の中継地点としての役割が中心となっています。
Tax haven=租税回避地であって、Tax heaven=税金天国ではありません。ただ租税回避という言葉自体は「不当に合法」という解説がされていて、タックス・ヘイブン=悪モノと思い込んでいる方も多いようです。

「オフショア金融市場」というのは、ボーダーレスな金融取引に対し、規制や課税方式等を国内市場と切り離して、比較的自由に取引ができる非居住者向けの市場のことです。例えばマイナー通貨等、その国内では規制が厳しく、持ち出しもできないような状況においてのヘッジ目的であるノン・デリバリー・フォワードのような相対取引もオフショア取引の一つです。

タックス・ヘイブンはそのオフショア金融の中心地でもあり、つまりは金融取引の規制がかなり緩いということで、上述の通り、世界中の金融機関の取引の中継点として使われています。投資効率を上げるためにレバレッジを大きく取ったり、複雑な仕組みを作るヘッジファンドなどは、ほぼタックス・ヘイブン籍となります。実際、私たちがよく購入している外国籍の投資信託もタックス・ヘイブン籍のものがほとんどです。日本の証券会社で購入する、日本の運用会社提供の投資信託も、こうしたタックス・ヘイブンを中継しているものが数多くあります。
当然のことながら、私たちがこうした投資信託を売買しても何も違法なものではありませんよね。

金融市場において、様々な仕組みや方法が考え出され、実行するためにはある程度自由な取引ができる市場が必要不可欠で、その結果、私たちも恩恵を受けることができます。もちろん暴走は許されませんし、節度とルールに則った上で、つまりタックス・ヘイブンに口座を保有し取引を行えば、居住している自国にキチンと申告をする等が大原則です。
こうした申告を行わず、安易に「税逃れ」を企てれば、もちろん「悪モノ」です。
日本をはじめ、各国もそうした「悪モノ」対策には乗り出していて、タックス・ヘイブンの協力を得ることにもなっていますので、近い将来自由闊達な市場という良い部分のみが残ることを期待します。

廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー
CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員