パウエルFRB議長発言が米ドル売りを誘う

11月30日、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の講演後、米ドルは強い売りに押されることとなりました。それまで米ドル/円は一定レンジ内でのもみ合いを続けていましたが、パウエルFRB議長の発言を受けて、明らかに市場のムードは一変しました。

今回の講演内容は、基本的に11月開催分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録の内容に沿ったもので、さしたるサプライズはなかったようにも思えます。そもそも、それ以前から「12月の米利上げ幅は0.5%ポイント」との見方が市場のコンセンサスでした。

それでも米ドルが強い売りに押されたのは、パウエルFRB議長が「これまで積極的に引き締めを行ってきたが、それが結果的に経済をクラッシュさせて、利下げを余儀なくされるという事態は避けたい」との見解を示したことで、市場が想定以上にハト派寄りと受け止めたことが1つには大きかったと思われます。

また、講演前に複数のFRB高官らが相次いでタカ派寄りの発言をしていたことも事実で、パウエルFRB議長も市場の過度な楽観に釘を刺すような講演を行うと思い込んでいた向きが市場には多かったということもあるでしょう。その思い込みと実際の講演内容とのギャップが米ドル売りを誘った部分もありそうです。

“アフター黒田”を見据えて

また、このところ市場で“アフター黒田”を先取りするようなムードが醸成されつつある点も見逃せないものと思われます。

2023年4月に日銀の黒田総裁が任期を迎えると、途端に日銀の政策が変更されるというのは非現実的と思われます。ただし、いずれは政策の見直しを迫られるときが訪れるはずであり、それを今のうちから先んじて想定しておく必要があると考える向きもあるのでしょう。

むろん、それは少々先走り過ぎと思われます。しかし、10月分の米消費者物価指数(CPI)発表以降の相場変動要因に「米ドル安」の要素だけでなく「円高」の要素も付け加えないと、いくら何でも米ドル/円が一気に10円余りも値下がりしたことの説明がつけづらいという部分もあるのかもしれません。

米ドル/円は一時134円割れの水準へ

ともあれ、先週末にかけて米ドル/円は一時134円割れの水準まで突っ込む場面を垣間見ており、それまでの過程で1つの節目と見られていた138円処や、8月2日安値から10月21日高値までの上げに対する76.4%押し=135円台半ばあたりの水準をも下抜ける動きを見せています。

目先は、現在134円台半ばに位置している200日移動平均線を明確に下抜けるかどうかが1つの焦点です。明確に下抜ければ8月2日安値の130.40円処が意識されやすくなると見られます。

逆に200日移動平均線が米ドル/円の下値をガッチリと支える展開となれば、あらためて138円処の節目を意識した出直りの動きとなる可能性もあると見ます。

目下の200日移動平均線は上向きの状態を続けており、有名な「グランビルの法則』に従うと「下抜けずに上昇したら買い」あるいは「平均線の下方まで下降したら買い」ということになります。先週は月末・月初めにあたり、特有な輸出入のフローが出ていた可能性も考慮したいところです。

ユーロ/米ドルの上値余地の行方は

もちろん、当面の米ドルの行方を想定するうえでは、足元で1.05ドル処を超えてきているユーロ/米ドルの上値余地をどこまで見込むかという点も重要です。

欧州の気候はこれまでのところ、当初の予想より穏やかに推移しています。それにより、エコノミストによる景気後退見通しも当初より緩やかになってきている模様ですが、今後、気温が大きく低下すれば、あらためてエネルギー危機が深刻さを増す可能性もあります。

ユーロ/米ドルの1.04-1.07ドル処は1つの節目であり、中長期的な基調転換のシグナルとなり得る62週移動平均線も足元で1.07ドル台前半の水準まで低下してきています。

来週12月15日の欧州中央銀行(ECB)理事会までは62週線を試す動きが見られる可能性もありますが、理事会が1つの転換点となる可能性もあると見られます。