ユーロ/米ドル:2023年は基本的にユーロ高・米ドル安トレンドを予想
約20年ぶりの「パリティ」割れが起きた要因とは
ユーロ/米ドルは、2021年1月の1.23米ドルから下落が始まり、2022年は一段とユーロ安・米ドルが広がった。そうした中で、2002年以来約20年ぶりに1ユーロ=1米ドルの「パリティ(等価)」を割り込むと、9月には0.95米ドルまで下落した。
このようにユーロ安・米ドル高トレンドが展開した中で興味深いのは、それが独米の長期金利差とはほとんど無関係だったことだ(図表1参照)。
独米の10年債利回りは、水準こそ違うものの、基本的に連動してきた(図表2参照)。
これは、2つの金利を重ねてみると、さらに分かりやすいだろう(図表3参照)。このため金利差は一定の範囲内で一進一退となり、ユーロ安・米ドル高トレンドが拡大した動きを説明できるものではなかった。
では、なぜユーロ安・米ドル高が、20年ぶりの「パリティ」割れが実現するまでの動きとなったのか。それは米国とユーロ圏の「金融政策の差」ということだろう。金融政策を反映する独米の2年債利回り差は、2022年にかけて大きくユーロ劣位が拡大した。こうした中でユーロ安・米ドル高トレンドが展開したことが基本的な要因だと思われる(図表4参照)。
ユーロ安・米ドル高トレンドが終わる可能性
ただし、FRB(米連邦準備制度理事会)が3月から利上げを始めると、それから約4ヶ月遅れとなる7月からECB(欧州中央銀行)も利上げを開始した。こうした中で、独米2年債利回り差ユーロ劣位拡大も一巡した。
ユーロ/米ドルは、9月に0.95米ドルまで下落したものの、その後は反発に転じ、「パリティ」を大きく上回る動きとなった。ユーロ/米ドルは、2021年1月から下落トレンドが展開する中で超えられなかった120日MA(移動平均線)が足元で1米ドル程度なので、それを大きく超える動きとなった(図表5参照)。このようなプライス・アクションは、ユーロ安・米ドル高トレンドがすでに終わったか、ほぼ終わりつつあることを示している可能性がありそうだ。
まとめ:2023年の為替 ユーロ/米ドルの予想レンジとその根拠
これまで見てきたことを整理すると、独米の金融政策の差、具体的には金融引き締め策への転換においてFRBがECBに対して先行したことに伴うユーロ安・米ドル高トレンドは、ECBの利上げ開始により、9月の0.95米ドルで終わったか、ほぼ終わりつつある可能性がありそうだ。
以上を踏まえると、2023年は基本的にユーロ高・米ドル安トレンドが予想される。ユーロ/米ドルの年間値幅は概ね1000~2000ポイント(0.1~0.2米ドル)。そんな年間値幅を参考に、既に0.95米ドルでユーロ安・米ドル高トレンドがほぼ終わり、ユーロ高・米ドル安トレンドが2023年に展開すると考えるなら、予想レンジはコアが1~1.1米ドル、ワイドなら0.95~1.15米ドルといったところではないか。
ユーロ/円と英ポンド/円:米ドル/円の影響が大きい展開が続く見込み
クロス円(円安)の上昇が終わると考える理由
2021年以降は、歴史的な米インフレ対策に伴う米利上げ局面ということで、為替相場では米ドルの売買が中心となってきた。こうした中で、2021年まではクロス円は方向感の出ない相場展開が続いたが、2022年に入るとユーロ/円も英ポンド/円も円安方向へ大きく動くところとなった(図表6、7参照)。
これは、1990年以来約32年ぶりに一時150円を越えるなど歴史的な米ドル高・円安が展開したことに引っ張られた面が大きかったと考えられる。そうであれば、そのような米ドル高・円安が終われば、ユーロ/円、英ポンド/円などのクロス円の上昇(円安)も終わる可能性が高いのではないか。
まとめ:2023年の為替 ユーロ/円と英ポンド/円の予想レンジ
クロス円は、2023年も基本的には米ドル/円の影響が大きい展開が続くと考えている。その米ドル/円は、12月1日付けのレポート「2023年の米ドル/円を予想する」で書いたように、歴史的な米ドル高・円安が終わっても、一方で米金利低下が当面は限られることから、米ドル安・円高も130円を大きく割れる可能性は低いと考えられる。
これをユーロ/円、英ポンド/円に当てはめると、2023年の予想レンジはユーロ/円は135~155円。英ポンド/円は、2022年9月に財政赤字への懸念による「トラス・ショック」が起こったように乱高下のリスクもあることから、150~180円で想定したい。