モトリーフール米国本社、2022年11月27日 投稿記事より

主なポイント

・投資家が旅行の減速を予想していることで株価は急落
・エアビーアンドビーには長期的な成長機会が見込まれる
・PER41倍の株価は魅力的

エアビーアンドビーは2023年に株価上昇が見込まれる

民泊サイトを運営するエアビーアンドビーは、旅行業界を一変させました。ほんの10年前まで、同社のコンセプトはほとんど知られていませんでしたが、今では、見知らぬ人の家を借りるという考え方はメジャーになっています。多くの旅行者にとって、エアビーアンドビーでの宿泊はホテルの代わりであり、またこのプラットフォームを通じて家を貸す数百万人ものホストにとっては副収入であり、中にはこれで生計を立てている人もいます。

ところが、エアビーアンドビーの株価は、2022年に大きく落ち込んでいます。年初来で50%近く下落しており、金利上昇や景気後退懸念で大きな影響を受けた高成長ハイテク株の1つと言えます。株価が割安な今、エアビーアンドビーには、長期的投資先として検討に値する多くの理由があります。

1. 高水準の利益率

2022年第3四半期は、売上高28億8,000万ドルに対して純利益は12億1,000万ドルとなり、利益率は42%でした。第3四半期はハイシーズンということもありますが、過去4四半期の平均でも利益率は20%です。しかも、会社側は第4四半期に利益率の上昇を見込んでいます。

2. 独占市場

エアビーアンドビーは、今や民泊の代名詞となっており、見知らぬ人の家に泊まることを指す言葉として定着しています。調査会社Mサイエンスによると、民泊市場におけるエアビーアンドビーのシェアは74%に上り、ネットワーク効果、スイッチングコストの高さ、高いブランド力によって、今後も独占的地位を維持し続ける公算が大きいとみられています。こうした独占的な力が、高水準の利益率を実現する理由の1つとなっています。

エアビーアンドビーは民泊という概念を生み出しました。競合他社がエアビーアンドビーの地位を奪うには、これまでとは大きく異なる、より良いものを提供しなければなりませんが、そう簡単なことではありません。

3. キャッシュ創出力

GAAPベースで利益率が高いことに加え、エアビーアンドビーはキャッシュベースでも高い収益性を誇っています。

過去1年間では、売上高80億ドルに対して、33億ドルのフリーキャッシュフローを計上し、フリーキャッシュフローマージンは41%に達しています。これほど効率的にキャッシュを生み出す企業は、そう多くはないでしょう。

4. 理想的なビジネスモデル

エアビーアンドビーは、インターネット上で成功を収めているユーザー生成型コンテンツのモデルをさらに一歩進めたものです。ユーザー(ホスト)はコンテンツではなく、エクスペリエンスを作り、そこから直接的に恩恵を受けます。フェイスブックのようなソーシャルメディアネットワークが広告という形でユーザーのコンテンツを収益化するのに対し、エアビーアンドビーでは、ホストがエクスペリエンスを直接販売し、商品と市場のマッチングを図る一方で、エアビーアンドビーはホストの努力に対して手数料を得ているのです。

5. 設備投資がほとんどない

こうした優れたビジネスモデルに加えて、エアビーアンドビーには、データセンターやインフラなど、他のハイテク企業で多額の投資を必要とするものに対する設備投資もほとんど必要ありません。2022年1-9月累計の設備投資はわずか1,660万ドルでした。つまり、同社の事業は拡張性が高く、需要に応じて簡単に事業を拡大することができます。

6. 追加の収入源

エアビーアンドビーの売上高の大半は、宿泊やエクスペリエンスに対する手数料収入ですが、予約が入ってから、その予約が実行されるまでの間に保有する資金から利息も得ています。同社はこれを「顧客預かり金」と呼んでいますが、金利の上昇に伴い、この副収入も大きくなっています。

第3四半期の金利収入は5,850万ドルでしたが、金利の上昇に伴って、この金額は増加するとみられます。

7. 不況への適応力

通常、旅行業界は景気の影響を受けやすい業界です。消費者は、ゆとりがあると休暇に多くのお金を使います。そのため、景気後退は旅行業界にとって明らかに逆風です。

しかし、エアビーアンドビーの場合、在庫が柔軟で、幅広く宿泊施設を提供できることから、ホテルチェーンやオンラインの旅行代理店と比べて不況に強い傾向があります。ホスト側も、経済的な需要の変化に迅速に対応しています。

例えば、第3四半期には、シングルルームのリスティング(掲載情報)件数が31%増加しました。世界中の人々が高騰するインフレに対処しようとしたことから、ホスト側が旅行者に格安の選択肢を提供するようになったためです。

8. 巨大な市場規模

エアビーアンドビーの過去4四半期の総予約額は611億ドルに達しましたが、同社はIPOの際に、現在サービスを提供している市場カテゴリーの最大市場規模は1兆5,000億ドルに上ると推定していました。

巨大な旅行・宿泊業界に対して、エアビーアンドビーのシェアはほんのわずかであるため、今後長期にわたって成長が見込まれます。

9. 強力な経営陣

エアビーアンドビーはパンデミックの初期に、従業員の4分の1を削減しましたが、その際、ブライアン・チェスキーCEOが従業員に宛てて、削減に至った理由と、削減の対象となった人への対応について説明したレターは、大きな称賛を受けました。経営陣も異例の対応を取り、解雇された従業員の転職を支援する「OB人材バンク」を立ち上げ、エアビーアンドビーの採用チームも退職者の職探しを支援しました。

最近では、チェスキーCEOは、不透明な価格設定に対する苦情に対応するため、サイトを更新し、以前から問題だった旅行者が前払いする金額を表示するようにしました。

キャリア情報サイトのグラスドアでは、83%が友人にエアビーアンドビーで働くことを勧めると回答し、チェスキーCEOを評価すると答えた割合も83%に達しています。同社は2016年に、働きたい企業の第1位にランクされました。チェスキーCEOと現経営陣に任せておいて問題はなさそうです。

10. 株価は魅力的

エアビーアンドビーの現在の株価収益率(PER)は42倍であり、プロクター・アンド・ギャンブル(PG)やコカ・コーラ(KO)といった低成長の大手企業と同程度のバリュエーションです。投資家は、エアビーアンドビーの好業績が同社独自の事業の強さではなく、旅行業界全体の回復を反映したものであると考えているようです。

しかし、同社はパンデミック発生以降、同業のブッキング・ホールディングスやホテルチェーン各社からシェアを大きく奪っており、今後景気が後退したとしても、その状況は続くとみられます。

エアビーアンドビーを成熟企業と同じように評価することは間違っていると思われます。エアビーアンドビーは依然として有望であり、長期的な成長機会と、それを生かす手段を持っています。

足元の株価は、今後数年間で投資家に大きなリターンをもたらしてくれるはずです。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Jeremy Bowmanは、エアビーアンドビーの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はエアビーアンドビー、ブッキング・ホールディングスの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは以下のオプションを推奨しています。コカ・コーラの2024年1月満期の47.50ドルコールのロング。モトリーフールは情報開示方針を定めています。