利上げは終点に近づいているのか

前回のコラムでは「主要中銀はそろそろ利上げペースを鈍化させる?」との観点から、豪中銀(RBA)や英中銀(BOE)の政策会合の結果に注目しておきたいと述べました。

既知のとおり、RBAは11月1日に7会合連続となる利上げの実施を決定しましたが、利上げ幅は0.25%に留まりました。また、BOEは11月3日に0.75%の利上げ実施を決定する一方で、この先の大幅利上げの見通しを強く打ち消すこととなりました。

RBAは理事会を年11回開催することから、1回あたりの利上げ幅が小さくても他の中銀の利上げペースに大きく劣るわけではないと見ることもできるのですが、やはり最大の根拠は先行きの不透明感が強いことにあると言えるでしょう。

また、BOEはターミナルレートについても「市場が織り込んでいるよりも低くなる」との見通しを示しており、市場は欧州中央銀行(ECB)のスタンスも同様であると見做している模様です。

どの中銀も「とりあえず、これまでの利上げの“効果”を見定めたい」とするのは当然のことで、いまだ利上げの確たる“終点”は見定められないものの、徐々に近づいているというニュアンスは伝わってきます。

米連邦準備制度理事会(FRB)にしても、先週の米連邦公開市場委員会(FOMC)の声明には、引き締めペースの減速を示唆する内容が盛り込まれていました。後の会見に臨んだパウエルFRB議長の発言は「利上げサイクルの最終地点(ターミナルレート)が想定よりも高くなる可能性」を示唆するものでしたが、それは利上げペースの減速自体を否定するものではありません。

中国のゼロコロナ政策の緩和に期待

先週末11月4日に発表された10月の米雇用統計の結果に対する市場の反応も「全体のムードに変化が生じつつあるのではないか」と思わせるところがありました。

雇用統計が強弱まちまちな内容であったことは確かですが、それにしても米ドル売りの反応はやや強めだったと言えるでしょう。

もちろん、それは目下の市場で中国がゼロコロナ規制による行動制限を緩和するのではないかという憶測が流れていることとも無縁ではないものと見られます。ただし、中国の衛生当局者からは「ゼロコロナ政策堅持の方針は揺るがない」との声も聞かれており、なおも事態は流動的です。

その意味からも、当面は中国の実際の出方を慎重に見定めてゆくことが極めて重要であると考えられます。

「2022年中国共産党第20回党大会」という一大イベントを先月通過したことで、ゼロコロナ政策を堅持する意味合いは薄れているはずであり、それだけに市場では緩和期待が盛り上がりやすくなっています。むろん、期待外れとなれば再び米ドルが買い戻されやすくなると心得ておくことも必要でしょう。

米ドル/円は145円処をクリアに下抜けるか

前回のコラムでも述べた通り、水準面で見た場合に米ドル/円は既にだいぶ“いいところ”まで来ていると見ることもできます。いわゆる「8年サイクル高値」に関して言うならば、タイミング的にはまだ早めであるものの、水準的には直近(10月21日)高値=151.94円がそれであったと見ることもできなくはありません。

さしあたり、極めて重要な節目である145円処をクリアに下抜けるかどうかがポイントであり、仮に下抜ければ当面のピークアウト感が拡がりやすくなることは確かでしょう。

また、前回のコラムで想定したとおり、先週は米雇用統計の発表前までユーロ/円、英ポンド/円の売りが正解でしたが、足元では目先的に1つの転換点を迎えた感もないではありません。

今週は、米中間選挙(11月8日)や10月の米消費者物価指数の発表(11月10日)などが控えており、基本的には様子見姿勢で臨みたいと個人的には考えます。特に中国の出方と米ドル/円の下値に注目しておくことが重要だと考えています。