24年ぶりに円買い介入へ
先週末にかけて米ドル/円は再び145円手前の水準まで値を戻す動きとなり、9月22日に実施された24年ぶりの円買い介入による円安是正効果は一時的なものに留まることとなりました。
ただ、さすがに145円台は当面の「防衛ライン」と見られている模様であり、そのこと自体が1つの介入効果と言えなくもないでしょう。それだけに、改めて145円台を試す動きとなった場合には、そこから一段の円安が再び加速する可能性もなくはないと、見ておくことも必要と思われます。
財務省が先週9月30日に発表した8月30日~9月28日の外国為替平衡操作額は約2.8兆円で、日次の額は非公開ながら先の介入の実施を反映するものとなりました。
「この程度の介入であれば、まだ複数回は実施可能」という声も聞かれますが、日本の都合による単独介入には外交上の制約もあると思われます。24年ぶりの介入が実施された背景として「首相訪米のタイミング」であったことが重要であり、今後は電話1本でオーケーというわけにもいかないでしょう。
英国の経済対策による英ポンドの行方とは
ここ最近の米ドル独歩高がファンダメンタルズに沿ったものであることは誰にも否定できず、実際、先週末に発表された8月の米個人支出やPCEコアデフレーターなどの結果も米ドル買いを立派に支援するものとなりました。
もちろん、一方で英ポンドやユーロの評価が一段と損なわれかねない材料も噴出してきており、当面は米ドルが一気に評価を落とすようなことにはなりにくいと見ておかざるを得ません。
英国のトラス新政権は、確たる裏付けもない大型減税策を中心とする経済対策を打ち出しており、それを受けて英ポンドは一旦暴落に近い下げを演じました。後に慌てて英中銀(BOE)が対応に乗り出したことで、ひとまず市場も落ち着きを取り戻しましたが、先週末にかけて見られた英ポンド/米ドルの戻りは一時的なものとなる可能性が高いと見られます。
トラス首相は、なおも政策方針を変えない意向を露わにしており、英国の世論調査では首相の辞任を求める声が強まっていると聞きます。今後、政策方針の大転換か首相の辞任でもない限り、英ポンドの値下がりは趨勢的に続く可能性が高いと思われます。
欧州の通貨価値を揺るがすイタリアの政権動向
また、9月25日に行われたイタリアの総選挙でポピュリズム色の濃い右派政権が誕生する見通しとなったことも欧州通貨全体の価値が損なわれかねない大きな問題と捉えられます。
今回の選挙で第一党に躍進した「イタリアの同胞(FDI)」のメローニ党首を首相に信任するかどうかは、最終的に大統領の判断に委ねられます。大統領による首相候補の指名と組閣の要請は10月13日に行われる予定で、それまでにも市場では様々な憶測が飛び交うでしょう。むろん、メローニ新首相誕生となれば、それはそれで欧州の経済社会全体の先行き不透明感を増幅することになりかねません。
米ドル/円は144円近辺で活発な買い、英ポンド/米ドルは戻り売りのチャンスか
ともあれ、目下のところ米ドル/円は145円手前で介入警戒と仕掛け的な売りが出やすくなっており、一方で144円近辺では活発な買いが入ってきています。当面は、その値幅の中でごく短期の売買を試みると同時に、いずれ大きく上か下に放れる可能性についても心積もりしておくことが必要と言えるでしょう。
一方、英ポンド/米ドルとユーロ/米ドルの戻りについては、やはり自ずと限りがあるものと見られます。ユーロ/米ドルについては、一目均衡表(日足)の基準線が目先の上値抵抗として意識されやすく、0.98-0.99ドルあたりでは戻り売りを仕掛ける算段で臨みたいと考えます。
また、英ポンド/米ドルについては21日移動平均線が目先の上値を押さえやすいと見て、同線が位置する1.13ドル台前半あたりの水準に戻り売りのチャンスがあるのではないかと考えます。