モトリーフール米国本社、2022年9月25日 投稿記事より

主なポイント

・投資家は、アドビの成長鈍化と、200億ドルでの突然のフィグマ買収を懸念
・ユニティ・ソフトウェアについても、広告関連の問題やゲーム市場全体の減速が懸念要素
・両社とも短期的な課題に直面しているが、長期的な投資先としてはアドビの方が明らかに安全

今は両社とも苦戦しているが、未来が明るいのはどちらか?

一見すると、アドビとユニティ・ソフトウェアは、まるで異なるタイプのソフトウェア企業のように見えるかもしれません。アドビは、デザインや文書管理、および企業向けといったクラウドベースのソフトウェアを幅広く開発しており、一方のユニティ・ソフトウェアは、主にゲーム開発者向けに開発・課金ツールを提供しています。

しかし、ユニティ・ソフトウェアは、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)の開発ツール、現実世界の物体をスキャンするための「デジタルツイン」ツール、ウェタ・デジタルの買収による映像特殊効果など、徐々にアドビの市場を侵食しつつあります。こうした市場拡大により、ユニティ・ソフトウェアはいずれ、アドビのように、多様なデジタルデザインツールをクラウドベースで提供するプロバイダーとなる可能性があります。

両社の株価はいずれも、2021年11月に過去最高値を付けましたが、その後、金利の上昇に伴って割高なグロース株が嫌気されたことを受けて、大幅に下落しています。アドビは高値から約60%、ユニティ・ソフトウェアは80%超の下落となっています。これほど人気のないソフトウェア銘柄に、再起を見込んで投資する価値はあるのでしょうか。

アドビ

アドビの2021年度(2021年12月3日まで)の売上高は前年比23%増の158億ドル、調整後1株当たり利益(EPS)は同24%増でした。しかし2022年度についてアナリストは、売上高は12%増、調整後EPSは9%増にとどまるとみています。成長減速の主な原因は、足元のマクロ環境下で企業の支出が鈍化していることですが、為替の逆風で状況は一段と悪化しています。

成長鈍化は予想の範囲内でしたが、アドビは先日、デザインツールを手掛けるスタートアップ企業のフィグマの買収を発表して投資家を驚かせました。フィグマは、ユーザーインターフェース(UI)やユーザーエクスペリエンス(UX)の市場でアドビのAdobe XDと競合しています。買収金額は200億ドルで、これはフィグマの2022年予想経常収入(ARR)4億ドルの50倍に相当します。アドビは買収額の半分を株式で賄う予定であり、これにより既存株式が7%希薄化され、これまでの自社株買いの大部分が相殺されることになります。

アドビにとって急成長中の競合企業を買収するというのは、理にかなった戦略ですが、買収額が高過ぎるように思われます。さらに悪いことに、アドビは、買収後2年間はEPSが希薄化され、利益にプラス寄与するのは3年目以降になると予想しています。

アドビの、現在の2022年度予想株価収益率(PER)は19倍、同予想株価売上高倍率(PSR)は8倍と妥当な水準にあります。しかし、このバリュエーションは以前の予想に基づいたものであり、サプライズとなったフィグマの買収が完全には織り込まれていません。買収は2023年に完了する予定です。現時点において、アナリストはアドビの2023年度の売上高を13%増、調整後EPSを15%増と予想しています。

ユニティ・ソフトウェア

ユニティ・ソフトウェアの2021年の売上高は前年比44%増の11億ドルでしたが、利益に関しては、GAAPベースでも、非GAAPベースでも、依然として赤字です。アナリストは同社の2022年売上高について、3つの逆風が主な原因となり、22%増にとどまるとみています。

第1に、オペレート・ソリューションズ事業の主力製品の1つであるUnity Adsが、「不良データ」を取り込んだことで多くのゲーム内広告が表示されなくなってしまった影響で、ひどく低迷しています。ユニティはその原因としてアップルの名前こそ出しませんでしたが、アップルの基本ソフトであるiOSのアップデートにより、ユーザーがターゲット広告の表示を拒否できるようになったことが原因である可能性は高いと思われます。

この問題を解消するため、ユニティは広告アルゴリズムを全面的に構築し直しています。同社はまた、転換を加速させるため、物議を醸しているアドテック企業のアイアンソース(IS)を44億ドルで買収することで合意しました。すると今度は、アイアンソースのライバルであるアップラビン(APP)が、ユニティを1株当たり約58.85ドルで買収しようとしましたが、ユニティ側は提案を拒否しました。

第2に、昨今のマクロ的逆風を受け、広告市場全体で成長が冷え込んでいます。そのため、Unity Adsのリブートが成功したとしても、当面の成長率は低調にとどまるとみられます。第3に、ゲーム開発者をユニティの主力製品であるゲームエンジンに駆り立てる、ビデオゲーム市場全体の成長がパンデミック後に減速しています。

ユニティの現在の株価は、新規株式公開(IPO)時から33%下落していますが、2022年予想PSRは8倍であり、格別に割安というほどではありません。

投資先としてはアドビの方が安全

アドビの成長鈍化とフィグマの買収は投資家を失望させていますが、それでもユニティ・ソフトウェアと比べると、今はまだ、安定した投資先と言えます。アドビの場合、景気の逆風を切り抜け、あとはフィグマの経営統合さえうまくいけば、弱気派を黙らせることができますが、ユニティ・ソフトウェアの場合は、主力のゲーム市場と広告市場が冷え込む中、主要な成長の原動力の再構築に取り組んでいるところです。

その上、アドビがPhotoshop、Illustrator、Premiere Proといったサービスで、クリエイティブデザインソフトウェアの分野で圧倒的強さを誇っている一方で、ユニティ・ソフトウェアはエピックゲームズのUnreal Engineなどとの直接的な競争にも直面しています。さらに重要な点として、アドビが着実に利益を出し続けている一方で、ユニティ・ソフトウェアは赤字が続いており、不採算成長企業にとっては厳しい市場です。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Leo Sunは、アドビ、アップル、ユニティ・ソフトウェアの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はアドビ、アップル、ユニティ・ソフトウェアの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは以下のオプションを推奨しています。アドビの2024年1月満期の420ドルコールのロング、アップルの2023年3月満期の120ドルコールのロング、アドビの2024年1月満期の430ドルコールのショート、アップルの2023年3月満期の130ドルコールのショート。モトリーフールは情報開示方針を定めています。