円安が続いています。米ドル/円相場は1ドル=140円台での値動きとなっています。年初からの円安によって、為替レートが日本の個人投資家の運用パフォーマンスに大きな影響を与えるようになっています。

日米の対照的な金融政策は継続する

円安の直接的な原因は、米ドル/円で言えば日本と米国の金利差の拡大です。

日銀はデフレからの脱却が充分に進んでいないという理由から、金融緩和を続けています。一方で米連邦準備制度理事会(FRB)、そして欧州中央銀行(ECB)はインフレ懸念から今月9月も利上げを行う予定です。

先進国の中では日銀の金融政策だけが世界とは真逆という特異な状況が続いています。

海外の消費者物価指数は、年率で2桁に近い上昇が続いており、インフレが沈静化する気配がなければ、利上げがさらに続くことが予想されます。

そうなれば、投機資金が金利上昇する通貨に流れる動きが続く可能性が高くなります。

日本の貿易赤字も円安が要因

それに合わせて、日本の中長期的な経済構造の変化も円安に拍車をかけています。

輸出の拡大によって日本の貿易黒字が日米貿易摩擦問題になったのは過去の話で、今や日本は輸入額の上昇によって貿易赤字が定着しています。

その主因はエネルギー価格の上昇です。2022年5月以降は、貿易赤字が毎月1兆円規模に膨らみ、経常黒字の縮小も続いています。

実需の円売り外貨買い圧力は、金利差とは関係なく今後も長期的に継続する傾向であり、円高になりにくい状況を作り出しています。

急激な円高の可能性もゼロではない

1ドル=140円台の米ドル高/円安で思い出されるのは、1998年の為替の動きです。

1995年の1ドル80円を超える円高から円安が進み、1998年に入ると140円台に米ドルは上昇しました。この時は6月17日に日米の協調介入が実施され、米ドル/円はピークアウトしました。

今回は米国が協調介入に応じる気配はありませんが、為替介入が無いとしても、口先介入などのトリガーによる円高への反転の可能性は常に考えておく必要があります。

例えば、海外のインフレが鈍化し、金利が低下したり、逆に日銀が金融政策を変化させることを示唆したりすれば、マーケットに大きな円高のインパクトが与えることになります。

円高か円安、判断に迷うなら50%ずつ保有する

短期的な為替の値動きで見れば、急速な円安によって高値警戒感が出てくるレベルです。しかし、個人的には上記のような状況を考えれば、さらなる円安がやってくる可能性も考えておいた方が良いと思います。

アセットアロケーションの外貨比率をチェックし、マーケットの相場観ではなく、資産配分の観点から外貨の保有をどの程度にするか決定し、それに向けた取引を粛々と進めていくべきです。

外貨を持たないまま、これ以上の円安が進めば、海外旅行にさえ気軽に行けなくなってしまいます。

今後、円安か円高かどちらになるのか全くわからないのであれば、五分五分と言うことです。つまり、円資産と外貨資産を50%ずつ保有するのが合理的です。

為替の動きが分からないため外貨投資をしないのではなく、わからないからこそ外貨資産を保有する必要があるのです。

「外貨を保有しないリスク」をしっかり考えておきましょう。