マネックス証券のブランドビジョン「大切なものに投資をしよう」。そこには、投資の価値を儲けや利益だけではなく、それぞれの未来や夢を実現させるものへと進化させていきたいという思いが込められています。ブランドビジョンを通じて、自分や社会にとって大切なもののために活動する人々の“想い”を発信しています。

今回は、地球温暖化など気候変動問題に取り組む気候変動活動家・小野りりあんさんの世界観にスポットを当てます。

14歳の頃からモデルを始め、女性誌などで活躍するかたわら、気候変動問題に関心を持った小野さん。2019年12月にはスペインで開かれたCOP25(気候変動枠組条約第25回締結国会議)にも参加しました。現地で、気候変動問題に取り組む世界各国の人々と出会い、自らも行動していく決心をしました。

現在はシェアハウス「アクティビストハウス」を運営し、さまざまな社会問題解決に取り組む活動家たちとの交流を深めています。

人々の幸せな生活も企業の健全な活動も、すべては地球があってこそ。社会の仕組みを大きく変革しない限り、加速度的に進む気候変動は食い止められないという想いを持つ小野さんは、人々とのつながりを大切にして活動を続けています。

今、興味を持っているのは「エシカル投資」。環境に配慮する、動物実験をしない、軍事産業にかかわらないなど、倫理的・道徳的な課題に真摯に取り組む企業のみを対象とする投資です。

「社会的な課題に取り組むためには、お金以上に人とのつながりが大切」と語る小野さん。自分1人がCO2削減の努力をするだけでも、その活動が社会全体に広がれば気候変動問題の改善に役立つと提言します。

地球環境や気候変動問題の解決に着目して投資を考えると、どのような市場や企業が浮かび上がるでしょうか。

気候変動問題に取り組む企業活動とは

2020年10月、菅義偉前首相は2050年までにCO2など温室効果ガスの国内排出量を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」を目指すことを宣言しました。日本のCO2排出の8割近くは産業、運輸、商業・サービスなど企業活動によるものです。

経済産業省は、2050年のカーボンニュートラル達成に向けて、成長が期待される重点分野を策定しています。その領域は「洋上風力・太陽光・地熱」「水素・燃料アンモニア」「次世代熱エネルギー」「自動車・蓄電池」「半導体・情報通信」から「カーボンリサイクル・マテリアル(※)」「資源循環関連」「ライフスタイル関連」に至るまで、多岐に渡っています。
(※)CO2を素材や燃料として再利用すること

気候変動問題は企業にとっても今後、取り組まなければならない緊急の課題です。ただ、特定の企業が個別に努力すれば済む問題ではありません。国の政策や金融市場の整備を通じて、すべての企業に求められているのは、カーボンニュートラル実現のための、環境に配慮した経営変革や新事業の展開です。

地球温暖化への対応を経済成長の制約やコストと認識するのではなく、成長の機会ととらえる発想が求められています。気候変動問題の解決に向けた経営方針や事業構造の見直し、研究開発や技術革新を進めることが、企業価値の向上や投資家からの評価に直結する時代になっているのです。

金融の世界でも、短期的な利益の追求ではなく、環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)に配慮した経営を行う企業を選別して投資する「ESG投資」が注目されています。個人投資家にとっても、地球環境に配慮した経営を行う企業を見極める目が求められていると言えるでしょう。

気候変動問題の解決に向けたビジョン

気候変動問題に関する国や企業、個人の取り組みによって、日本、そして世界にどのような変化が起こるのでしょうか。5つの視点から気候変動問題を解決するための投資のビジョンを整理してみましょう。

幸せ・豊かさ:

地球環境と調和がとれた経済や社会を実現することで、人々が豊かで幸せな生活を過ごせるようになる。

市場:

気候変動問題に対する企業の取り組みがCO2の排出量取引といった市場を生み出す。

新しい価値観:

気候変動問題に対する配慮が、大量生産・大量消費の時代から、節約、リサイクル、エコ、環境に優しい衣食住など、新たな価値観やライフスタイルの創造につながる。

成長・発展:

省エネ、再生エネルギー、蓄電池、パワー半導体(※)、カーボンリサイクルなど、地球環境に配慮した技術革新が発展・進化する。
(※)電力を制御して省エネに貢献する半導体素子のこと

未来を変える力:

暴走する気候変動を食い止めることは、持続的に発展・成長できる地球の未来を守ることにつながる。

気候変動問題を身近に感じられる投資先

気候変動問題に配慮した生活を体感できるような商品やサービスを提供している企業を応援する意味で投資先を選ぶことによって、気候変動問題をより身近に感じられるのではないでしょうか。

地球環境やエコ、リサイクルを体感できる上場企業として以下のような銘柄を挙げることができるでしょう。

・ダイキン工業 (6367)

空調機器で世界シェアトップを誇る空調機器メーカー。海外売上高比率7割で、エアコンの省エネ技術は世界屈指。2020年度には日本の家庭部門の年間排出量の約4割に相当する 7,000万トンのCO2を抑制した。

・ウェザーニューズ (4825)

日本では唯一と言ってもいい気象情報に特化した上場企業。モバイルアプリ「ウェザーニューズ」の有料会員収入が収益源。気候変動問題対策に関するコンサルティング、CO2排出量の可視化サービスなども手掛ける。気候変動問題への適応・緩和策ニーズの高まりもあり、高成長が続いている。

・ユーグレナ (2931)

ユーグレナ(藻類の一種であるミドリムシ)を使った食品やバイオ燃料の製造を行うベンチャー企業。「サステナビリティ・ファースト」が経営哲学。同社のバイオ燃料「サステオ」はCO2を吸収する微細藻類と使用済み食用油で作られている。

・ウエストホールディングス(1407)

太陽光発電所の建設や保守を行う電力インテグレーター。メガソーラー発電所の建設など再生可能エネルギー事業やCO2削減を目指す省エネ事業が収益の2大柱。

・レノバ(9519)

太陽光、バイオマス、風力など再生可能エネルギーのみを使った発電を行う。全国各地にバイオマス、メガソーラー発電所を展開するほか、洋上風力でベトナム企業と協業するなど、世界市場にも進出。

CO2削減など、気候変動問題に配慮した企業の活動は始まったばかりです。気候変動問題の解決に寄与する事業だけを行う企業は、まだ規模が小さな小型株がメインと言えるでしょう。今後、地球温暖化を防ぐ再生エネルギーの活用が当たり前の世の中になれば、こうした環境問題に特化した企業が大きく成長するかもしれません。

上記のような環境関連株を株式市場で購入するには、100株単位となるため、10万円以上の高額な資金が必要です。ただ、1株単位で少額から購入できる単元未満株で取引できる場合もあります。

一方、海外に目を向けると、環境関連銘柄として投資家から最も評価された企業は、カリスマ経営者イーロン・マスク氏が創設した電気自動車(EV)メーカー、テスラ(TSLA)と言えるかもしれません。同社は環境負荷の低いEVの専業メーカーとして、高成長を遂げ、株価も上昇。世界の時価総額トップ10企業入りを果たしました。

EVを動かすモーターや自動運転に関しては他社の追随を許さない技術力、ブランド力があり、米国でも中国でも販売台数を飛躍的に伸ばしています。同社のEVはCO2排出量がゼロになります。その排出量の枠を他社に売却することも、同社の収益に貢献しています。

米国ETFなら、クリーンエネルギーセクターのグローバル株式に幅広く分散投資ができます。例えば、世界有数の資産運用会社ブラックロックが運営する「iシェアーズ グローバル・クリーンエネルギー ETF、ベンチマークはS&P グローバル・クリーンエネルギー指数」(ICLN)です。

構成銘柄トップは太陽光発電業界向けにインバーターシステムを販売する米国のエンフェーズ・エナジー(ENPH)、2位は太陽光発電の発電力を最大化するインバーター販売のイスラエル企業・ソーラーエッジ・テクノロジーズ(SEDG)、3位はデンマーク・コペンハーゲンに本社のある風力発電会社ベスタス・ウィンド・システムズが挙げられます。このように、幅広く世界のクリーンエネルギー企業に投資ができます。

地球環境に有益な技術や製品の開発に邁進する企業に投資することは、気候変動問題を意識し、その解決に日々関心を持つための1つのきっかけになるかもしれません。

【図表】気候変動問題の解決に注力する企業
 
銘柄コード 銘柄名 市場 株価 売買単位 いくらから投資できる?
(概算購入金額) 
企業情報
(6367) ダイキン工業 東証プライム 2万2,890円 100株 228万9,000円 省エネエアコンが絶大な世界シェアを誇る。砂漠都市カタール・ドーハ開催の2022年サッカーワールドカップ会場にも空調設備を多数納入。環境に優しい日本の大企業では世界的な知名度。
(4825) ウェザーニューズ 東証プライム 7,560円 100株 75万6,000円  気象情報の配信に特化した上場企業。アプリ収入の他、海運会社向け航空気象、鉄道会社向け陸上気象など企業向けにも情報提供。気候変動問題への適応・緩和策ニーズで業績拡大中。
(2931) ユーグレナ 東証プライム 867円 100株 8万6,700円 藻類の一種であるミドリムシを使って世界の食料危機や地球環境に優しいバイオ燃料の普及を目指している。赤字経営が続くものの、同社が手掛けるバイオ燃料は気候変動問題の切り札となる可能性も。
(1407) ウエストホールディングス 東証スタンダード 4,435円 100株 44万3,500円 太陽光発電所の建設や保守を行う。従来の固定買取制度に依存しない、太陽光発電由来電力の販売強化で今期は増収増益予想。再生エネルギー関連の独立系企業として注目度大。
(9519) レノバ 東証プライム 3,635円 100株 36万3,500円 CO2を排出しない再生可能エネルギーのみを使った発電事業を行う。秋田県沖の洋上風力事業の入札に落選し、赤字転落したものの、今期は大幅な増収増営業益を見込む。
(TSLA) テスラ 米国NASDAQ 288.59ドル 1株 4万1,845円 電気自動車の専業メーカーとして急成長。ITを駆使した自動運転技術でも世界屈指。米国や中国で販売が急伸。いまやトヨタ自動車をはるかに上回る時価総額を誇る。
(ICLN) iシェアーズ グローバル・クリーンエネルギー ETF 米国NASDAQ 20.61ドル 1口 2,988円 S&Pグローバル・クリーンエネルギー指数をベンチマークにしたETF。太陽光発電や風力発電など、CO2とは無縁な世界各国の再生可能エネルギー関連企業に分散投資できる。
※「概算購入金額」は2022年9月22日の株価の終値をもとに計算。
外国株は為替レート1ドル145円で円換算
出所:各種公表資料より大切なものに投資をしよう編集チームが作成。