8月26日(金)、米国で開催されたジャクソンホール会合にてパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が講演を行いました。その中で1980年代にインフレと戦ったボルカー元FRB議長を引き合いに出しながら、インフレが収まるまで現状の金融政策を維持する姿勢を表明しました。これを受けて、暗号資産市場は下落し、NYダウ平均株価も1,000ドル超の下落でマーケットが引けました。暗号資産市場は週末も下落幅を拡大しています。

今回の講演内容を受けて、米国がリセッション入りして2023年早々に金融緩和にシフトするというシナリオが完全に崩れたと考えています。ここ数か月間、このシナリオへの期待感から株式市場や暗号資産市場は上昇していましたが、単なる調整だったと考えた方が良さそうです。

過去のデータを振り返ると、9月は株式市場が軟調な傾向が見られますので、しばらく現物のエントリーは控え、レバレッジトレードで売り戦略の方が良いかもしれません。

では、チャートを見ていきましょう。

BTC(ビットコイン)、上昇トレンドラインを明確にブレイク

【図表1】BTC/JPY 日足チャート
出所:MONEX TRADER CRYPTO(iPhoneアプリ)

BTC/JPY日足チャートです。上昇トレンドラインを明確に抜け、SMA30(1ヶ月移動平均線)やSMA90(3ヶ月移動平均線)の下で推移しています。下落トレンド再開の合図のようにも感じます。MACDも0.00付近から下降が再スタートするように思います。

ここからの下落はトレンドが強いものになりやすいので注意が必要です。持っているポジションをほとんど手仕舞いし、ショート戦略で6月の安値更新を視野に考えた方が良いでしょう。

2022年、FOMC(米連邦公開市場委員会)はあと3回予定されています。私は残りの会合すべてで利上げが実施され、1回の会合で政策金利0.50-0.75%の引き上げが断続的に行われると予想しています。つまり、年末には政策金利が4.00%以上に達する見方を強めています。

2023年も金融引き締めが継続する、あるいはしばらく政策金利が高止まりする流れになるでしょう。今回のジャクソンホール会合でのパウエルFRB議長の講演では、『インフレ退治≧リセッション』という強い決意が感じられましたので、ドル建てBTCは下落すると予想します。円建てBTCもそれに連れるかたちで下落すると考えています。

ETH(イーサリアム)、下落トレンド再開となるか

【図表2】ETH/JPY 日足チャート
出所:MONEX TRADER CRYPTO(iPhoneアプリ)

ETH/JPY日足チャート分析に移ります。

前回コラムで述べた通り、9月15日前後に予定されているアップデート「The Merge」への期待感からで7月から8月にかけてETHが買われていましたが、その期待が剥落してきた印象です。

しかし、ジャクソンホール会合での講演内容を受けてETH価格は振り出しに戻る可能性が出てきました。またアップデート完了後、ETHの売りが一部で出てくると思います。期待感で先行した買いが大きいだけに、今後は売り注文によるカウンターも大きなものになると予想します。

私はETHに対して強気な姿勢でしたが、BTC同様に様子見の姿勢に切り替えたいと思います。(※再度の買いエントリーは9月末か10月上旬以降を予想しています)

現在、SMA90より上で推移しており、まだ踏ん張りを見せています。この移動平均線を割り込んできますと、テクニカル的には下落トレンド再開となります。

下値のターゲットは17万円台のサポートラインと考えています。

米ドル/円上昇、暗号資産市場への影響は

本日は、米ドル/円の状況による暗号資産市場への影響についても触れておきたいと思います。

【図表3】USD/JPY 4時間足チャート
出所:Trading View

今朝(8月29日午前執筆時点)、米ドル/円が上昇していますので、円建てBTCの下落は緩慢です。ドル建てBTCは下落が急角度になっていますので、その辺りも今後考慮しなければならないでしょう。

仮に、米ドル/円が150円台となれば、現在レートよりも10%高くなるので、円建ての暗号資産は全般的に10%下落が緩慢になります。円建てで見ると、コインによっては、上昇しているものもあるでしょう。

米ドル/円がここから急上昇となる場合、為替レートにも配慮しながらトレードする必要があります。私は今週-来週中には一度140円への大台トライが見られると予想しています。

7月に付けた米ドル/円の高値は139.40円付近です。このレジスタンスラインを突破しますとショートカバーで一気に140円手前まで持ち上がるように思います。今後1ヶ月間は、米ドル/円チャートとBTC/JPYチャートを比較しながら対応していきたいところです。

今後も強い金融引き締めを意識した展開が続きそうです。暗号資産市場も一定の影響を受けるでしょうから、慎重に投資判断をしていきたいと思います。