モトリーフール米国本社、2022年7月31日 投稿記事より
主なポイント
・ウォルマートは第2四半期および通期のガイダンスを修正
・コスト増とインフレの影響で成長は鈍化
・通期で2桁の減益となる見通し
株価は高値から25%超下落しているが、最悪期は終わっていない可能性も
小売り大手ウォルマートの株価は、7月25日に発表した2023年度(2023年1月期)第2四半期および通期のガイダンスが失望を呼び、同日の時間外取引で13ドル超(約10%)下落しました。同社の第2四半期決算発表は8月中旬の予定だったため、今回のニュースは投資家に衝撃を与えました。ディスカウントストアチェーンを展開するターゲット(TGT)も、四半期途中の6月初旬にガイダンスを下方修正したことで、株価は下落しました。
ウォルマートもターゲットも、四半期決算の合間に、市場を動かすような業績見通しを発表することは珍しく、こうした情報は株式市場全体の不確実性につながります。しかし、いくつかの理由から、ウォルマートによる見通しの下方修正はさほど驚くことではなく、むしろ容易に予想できたことでした。今回の業績予想の下方修正の解釈の仕方と、同社の株が買い時であると考える理由についてご説明します。
ガイダンスの修正内容
ウォルマートは現在、2023年度の売上高を前年比4.5%増と予想しています。インフレによるコスト上昇を考慮しなければ、まずまずの数字に見えるでしょう。インフレによる影響は営業利益予想に表れており、2023年度の営業利益は同11~13%減となる見通しです。同様に、調整後1株当たり利益(EPS)も同11~13%減が予想されています。
もしガイダンス通りの結果となれば、極めて低調な業績と言えます。営業利益が12%減ということは、2023年度の営業利益は228億ドルとなり、パンデミックの影響を大きく受けた2021年度の226億ドルと同程度の水準です。10年前の277億ドルと比較すると18%減となります。
会社側は通期の営業利益率を3.8~3.9%と予想していますが、これは過去10年の中央値である4.6%を下回ります。簡単に言えば、予想される増収率では、コスト上昇をカバーするには不十分だということです。
同様の展開でも事態は一段と深刻
ウォルマートは、人件費、燃料費、配送・物流費、商品原価といった投入コストが収益性を圧迫していることから、利益率が低下し続ける可能性を示唆しています。その上、商品構成は裁量的商品から、食品や日用品といった生活必需品へシフトしています。
同社は顧客に対し、最安値を約束しています。価格が安いということは、利幅が小さいことを意味します。とはいえ、ウォルマートでは、食品よりも衣料品の利益率が高く、家電や家具といった高額商品は利益率もさらに高い傾向があります。こうした商品は、個人消費が旺盛だった2020年や2021年に飛ぶように売れました。
しかし、2022年は違います。ウォルマートでは現在、数四半期前まで需要があった商品が売れなくなり、在庫が積み上がっています。加えて、季節は夏から秋へと移り変わっており、秋物を店頭に並べるためには夏物商品を値引きしてでも売りさばく必要があるのです。
ウォルマートにとっての課題は、顧客のニーズを数ヶ月前に予測しなければならないことです。パンデミックの間は、サプライチェーンの混乱や需要の増加により、ウォルマートをはじめとする小売各社は商品を前倒しで発注し、通常より多い在庫を抱えることを余儀なくされました。個人消費が上向いていれば、こうしたことは問題ではありません。しかし、個人消費が落ち込めば、ウォルマートはギアをバックに入れ替え、目の前の在庫を減らし、2022年の年末商戦が当初の予想よりも低調となった場合に備えて、過剰注文にならないようにしなければなりません。
今後の見通し
2023年度第1四半期決算発表の際の経営陣のコメントからすると、ウォルマートの発表は特に驚くことではありません。それどころか、今回のニュースは、同社の業績が再び成長軌道に乗るまで、しばらく低迷する可能性があるという厳しい現実を改めて浮き彫りにする形となりました。
その意味で、ウォルマートの株価が52週安値に向けて売られたのも無理もありません。しかし、分散ポートフォリオに加える優良配当銘柄を探している投資家にとっては、ウォルマートの1.8%の配当利回りと市場での優位性は一考の価値があると思われます。
免責事項と開示事項 記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Daniel Foelberは、記載されているどの銘柄にもポジションを保有していません。モトリーフール米国本社はターゲットおよびウォルマートの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。