2022年7月20日、テスラ(TSLA)の第2四半期の決算発表が行われました。テスラと言えば、新型コロナウィルスのロックダウンで上海ギガファクトリーの工場の操業が止まった際に、CEOのイーロン・マスク氏が景気の見通しに対して、「超悪い経済(Super bad economy)」になるだろうと悲観的な発言を行いました。人員削減などの一見弱気な発表に加えて、イーロン・マスク氏はTwitterの買収についても世間を騒がせていました。

しかしその結果はと言うと、市場の懸念とは裏腹に事前予想を上回る決算発表を行い、テスラの株価は発表後の翌日10%上昇しました。

事前予想を上回ったテスラの決算発表

第2四半期の売上については、全ての事業において事前予想を上回りました。売上は、コンセンサス予想の166億ドルを超え、169億ドルを発表しました。テスラ車の人気は世界的に高く、同社の車は作れば売れるという構図は変わっていないようです。

EPSについては、市場予想の1.83ドルを超え、2.27ドルを発表しました。R&D経費が予想より下回り、所得税引当金も低かったことが理由となっています。自動車部門の粗利益率は26.2%と、コンセンサス予想の25.9%を超えています。

今後も増産が期待、2022年後半は140万台生産も有力視

テスラは2022年6月の生産台数が過去最高を記録し、2022年後半も生産増加は可能としています。同社は、今回の決算発表後の投資家向けのコンファレンスコールで、引き続き、長期に渡って年率平均50%のデリバリーを達成するという目標を再確認しました。もちろんこれには、生産用パーツ、工場の稼働時間、操業効率化、サプライチェーンの安定化が条件となります。

2022年後半について、現在のペースでいけば生産台数は前年比50%増となり、市場の予想である140万台の生産は可能だと有力視されています。同社のマネジメントも、テスラ車に対する需要は引き続き強く、供給を超えている状況だと説明しています。

ビットコインを売却し、現金比率を高める

現金および現金同等物については、9億ドル増え189億ドルとなりました。テスラは保有しているビットコインの75%を売却し現金化したことで、イーロン・マスク氏がビットコインに対し弱気になったのではないかと話題になりました。

しかしこれは、中国経済に対する懸念があるなか、現金比率を高めたいというのが理由です。イーロン・マスク氏は、ここでビットコインを売却したからといって、ビットコインに対して弱気になったということではないとコメントしています。安定な局面で現金比率を高めるという、あくまでも事業継続のための判断をしたということです。

2022年後半は利益率の改善も見込まれる

テスラの自動車部門については今後、粗利益のさらなる改善が見込まれそうです。その理由としては、上海のギガファクトリーの生産活動が2022年後半には元に戻ることが挙げられます。さらに、生産効率の高いベルリンとテキサスのギガファクトリーがフル稼働に向かう過程で生産台数が増えると予想されています。販売価格が上昇していることもあり、粗利益が改善されると見込まれているのです。

将来的に自動運転を可能とするFSD(完全自動運転)ソフト

将来的にテスラ車の自動運転を可能とするFSD(完全自動運転)ソフトについては、北米ではベータ版が現時点で10万車以上に搭載されており、2022年の6月までに3500万マイル以上の運転データが集められているとしています。これだけのビッグデータを保有することができるのはテスラ以外にはないと考えられます。

自動運転を可能とするのがAIです。テスラのAI技術については、AI担当ディレクターであるアンドレジ・カーパシー氏の退社が決算発表1週前に発表され、今後の開発への懸念が浮上しました。この件についてテスラのマネジメントは決算発表後のコンファレンスコールで、同社にはおよそ120人のAIソフトウエアのエンジニアがおり、今後の自動運転技術を完成させることに心配はないとコメントをしています。

はたしてテスラの株価は割高なのか

テスラの株価に対する見方はアナリストの間でも意見が分かれます。例えば、テスラを他の自動車会社と比べると株価EBITDA(利払前・税引前・償却前利益)倍率で見ると、現在の株価は割高なのですが、これをテクノロジー企業の株価と比較すると決して割高ではないのです。

私個人としては、これまでの自動車会社と同一視できないのがテスラであり、完全自動運転を最初に可能とするのはテスラであろうと期待しています。テスラの株をテクノロジー株として評価することは正しい判断であると考えます。テスラは私たちの未来を変えてくれる、ワクワク感のある夢のある企業であることは間違いない、そう思えてならないのです。