先週、米連邦準備制度理事会(FRB)が0.75%の利上げを決め、スイス中央銀行も利上げに転じました。そのような動きと対照的なのが、日銀の金融政策です。

金融緩和を続ける日銀

日銀は先週開催された政策決定会合で、金融緩和の継続を決定しました。

これは、インフレ懸念からに金融引き締めを急ぐ欧米の中央銀行とは真逆の動きです。

政策金利をマイナス0.1%に維持するだけではなく、イールドカーブコントロールと言われる長期金利の低位安定を国債の買い入れによって継続します。さらに、年間12兆円を上限に、上場投資信託(ETF)を買い入れる措置も維持することを決めました。

日銀が利上げをしない理由

日銀が他国の中央銀行のように利上げをしない理由の1つが、インフレ動向の違いです。

日本国内でも消費者物価指数の上昇が見られ、直近では年間2%を超える水準まで上がってきました。

しかし、日銀は国内の最終需要はまだ弱く、継続的なインフレ(価格上昇)を続ける環境に至っていないとの判断です。

確かに、賃金の上昇が見られない中でのインフレは最終需要の減退につながり、再び景気を後退させ、デフレ基調に戻るリスクがあります。

また、金利上昇は日銀が保有する国債の評価損につながります。日銀が保有する500兆円近い国債の金利上昇リスクは極めて大きく、利上げや長期金利の上昇は日銀のバランスシートの劣化につながります。市場金利の上昇は、最終的に中央銀行の信任低下をもたらす危険があるのです。

もし金利が上がるとどうなるのか

しかし、今後日本国内でも消費者物価指数が日銀の想定を超えて大きく上昇することになれば、景気回復よりもインフレの抑制を優先すべきとの意見が強まることが予想されます。

また、急速な円安が進んだことによる日銀の金融政策に対する批判も出ています。

今後、更に想定以上のスピードで急速な円安が進んだり、消費者物価指数が急騰するような経済環境に変われば、日銀が利上げに追い込まれるシナリオも考えられます。

もし日銀の金融政策が緩和継続から引き締めに転じれば、一時的には金利差縮小の思惑から円高が進むのではないでしょうか。

また、日本株には金利上昇によるマイナスの影響が出てきます。REITや国内不動産も借り入れ金利の上昇が嫌気され、価格が下落する可能性が高くなります。

日本人投資家が取るべき投資行動

資産運用に影響を与える国内要因は日銀の金融政策だけではありません。

中長期的には、エネルギー価格の上昇と円安からくる貿易赤字の拡大とその結果としての経常収支の悪化、日銀の国債買い入れによるバランスシート膨張による信用リスク、そして日本の財政赤字の拡大。これらの根本的な問題が、マーケットのテーマになるのではないかと考えています。

これらの要因は全て円安要因として作用することになります。ただし、マーケットのテーマとしていつ出てくるのかは予想できません。

現在のような不確実性の高いマーケット環境においては、将来の予測を決め打ちして集中投資をするのは賢明ではありません。慎重にリスクを抑えながら、分散投資を続けることが必須です。

日本の個人投資家の最大の問題は、円資産に集中し、外貨資産が少なすぎることです。外貨資産を保有していない人は、50%ルールに基づき、時間分散しながら積み上げていく必要があります。

今回は金融緩和の継続を決めた日銀も、今後は政策を変更させていく可能性があります。それ以外の不確定要因も増えています。

想定外の変化があった場合も、慌てずに対応できるようにポートフォリオの分散を今のうちから進めておきましょう。