7月に入り中国の温家宝首相は、中国経済が「極めて大きな下振れ圧力」に直面していると述べ、「現在の主な任務は投資促進だ」と断言しています。そして、7月26日の国営の新華社通信によると、中国の謝旭人財政相が中国は積極的な財政政策を維持するほか、年後半には当局は小規模な企業や新しい戦略的産業への税優遇策を約束どおり導入する、と述べたとのことです。これまでも何回か指摘してきましたが、中国政府はインフラ投資を促進することで中国経済の立て直しを図ろうとしており、開発計画の認可を早めています。
7月26日、中国湖南省の省都・長沙は8292億元規模のインフラ整備・産業振興計画を発表しました。具体的には長沙黄花国際空港の第2期工事、市内の道路や公園の整備、旧市街の再開発計画などになります。また、7月25日の新華社通信によると、中国政府は2015年末までに高速鉄道ネットワークを現在の1.3万キロメートルから、約3倍の4万キロメートルに拡大する計画を完了する方針だとのことです。鉄道省は中国最大の債券の発行体なのですが、2011年の鉄道事故を受け、鉄道への固定資産投資は1-4月に前年同期比で48.3%減少していたところです。今回の政府声明で、下半期へ向けての急回復が期待できるところでもあります。
もっとも、懸念点もあります。たとえば、前述の長沙のプロジェクト発表では、その資金調達方法などの詳細については発表されておらず、投資家の参加を呼びかけただけにとどまっています。また、プロジェクト完了時期のメドも明らかにしていません。中央政府はインフラ投資促進で経済の活性化を図りたい一方、現在は欧州債務危機の問題で欧州の金融機関などが中国から資金を引き揚げている最中で(その結果人民元安に振れているわけです)投資家不在の状態です。しかし、地方政府の主要財源の1つである不動産の市況が中央政府の不動産引き締め政策の影響で軟調な状況で、地方政府はこれまでのように土地を不動産業者に売却して資金を調達しにくくなっており、思うようにインフラ投資を進められない側面があるのだと思います。いかに資金を呼び込んで投資に結びつけるかが、今後中国経済の大きな課題の1つと言えそうです。