ゼロコロナ政策に加え、強力な景気対策を目指す

2022年6月初めの中国本土市場・香港市場はともに上昇基調となりました。2022年5月30日終値から6月7日終値までの騰落率は、上海総合指数が+2.8%となり、香港ハンセン指数は+2.5%となっています。1週間の上昇率としてはかなりの上昇率と言えます。株価が上昇している背景には、やはり政策期待があります。

まず、中国の李克強首相が6分野33項目から成る政策パッケージ、上海のロックダウン解除とそれに伴って「景気の回復と振興を加速する行動方案」という景気対策を打ち出したことがあります。

中国の製造業PMIや非製造業PMI、鉱工業生産や小売売上高といった経済指標をみれば中国の景気減速は明らかです。このままでは2022年の成長目標であるGDP成長率5.5%前後は達成できない可能性が高いでしょう。

報道によると、中国は新型コロナウイルスに対する政策について、ダイナミックゼロコロナ政策(いわゆるゼロコロナ政策)は続ける可能性が高い一方で、李克強首相が主導して経済対策を行い、中国経済の立て直しを行って、ゼロコロナ政策と経済対策の同時並行を目指すとあります。

6月1日に開かれた国務院常務会議で李克強首相は6分野33項目から成る政策パッケージについて、これを加速して一層効果のあるものにする意向を伝えています。

例えば、1,400億元超の税還付は7月に支払うなど、スピード感もあり、またプラットフォーム企業の国内外の上場を支持するなど、株式市場へのプラスのインパクトもあります。

ゼロコロナ政策についてもそうですが、中国の場合は全体の方針が決まると一気にアクセルを踏み込んでその方針を強力に推し進めることができる政治体制であるため、もちろん、ゼロコロナ政策による再度のロックダウン発動などのリスクは残りますが、李克強首相の経済安定措置政策には期待がかかるところです。

中国当局、配車ディディの調査完了

これに加えて6月6日には大きなニュースがありました。中国当局が配車サービスを手掛けるディディ(滴滴)グローバルと米国に上場するハイテク企業2社への調査を終え、早ければ同週にも新規ユーザー登録の禁止措置を解除する準備を進めているとの報道です。

中国当局は2021年7月に国家安全保障上の理由からこれら企業の調査を開始し、アプリストアからのアプリ削除を命じていました。この報道を受けて、香港や米国に上場している中国企業の株価は大きく上昇しています。

6月6日の株価上昇率を見てみると、例えば、美団(03690)が+9.9%、アリババ・グループ・ホールディング(09988)が+5.0%、JDドットコム(09618)が+4.7%、小米(01810)が+3.2%、テンセント(00700)が+2.4%といった具合です。中国株が大きく下落してきた最大の理由がIT企業への締め付けでしたので、これで最悪期は過ぎたと見る投資家も多い様子です。

なお、直近で発表された経済指標を見てみると5月のCaixin中国製造業PMIが48.1(市場予想49.0、前月実績46.0)、Caixin中国サービス業PMIが41.4(市場予想46.0、前月実績36.2)と、4月よりは良くなっているのですが、市場予想は下回っており、景況感の境目である50は下回っている状態が続いています。

李克強首相は先月末に3月から4月にかけて雇用や工業生産などの中国の経済指標は悪化しており、一部についてはコロナ禍の2020年よりも打撃が大きかったとの認識を示した上で「発展こそ中国の一切の問題を解決する基盤であり、カギだ」と発言しています。

再度のロックダウン発動といった不測の事態さえ起こらなければ、経済回復を目指した中国当局の政策によって、中国本土市場・香港市場は堅調な株価推移になるのではないかと思います。