モトリーフール米国本社、 2022年5月30日 投稿記事より

主なポイント

・ズームの売上高は12%増、フリーキャッシュフローは10%増だが、GAAPベースの利益は半減
・減益の一因は、アフターコロナの広告費用の増加
・パンデミックの間に確保した主導的地位を維持するための積極的なR&D投資も減益の一因

利益は大幅に減少しても、売上高とフリーキャッシュフローは成長し続けている

新型コロナウイルスの感染が拡大する中、ズーム・ビデオ・コミュニケーションズほど、不確実な時代のニーズに対応できた企業はほとんどないでしょう。在宅勤務やビデオ会議をサポートする一連のサービスを通じて、「ズーム」という言葉は企業名から1つの動詞に進化しました。

しかし、パンデミックがほぼ終息し、新型コロナウイルスがこの時代に特有の長期的な病となった今、ズームは再び注目を浴びるために何をしようとしているのでしょうか。その答えは、同社が第1四半期(2-4月期)決算を発表した5月23日に見つかりました。同社は現在、在宅勤務を続ける人とオフィスに戻った人をつなぐ「ハイブリッドワークの促進」に取り組んでおり、その一環として、「Zoomコンタクトセンター」、「Zoomホワイトボード」、「Zoom IQ for Sales」といった新サービスを打ち出しています。

既存サービスにこれらの新サービスが加わり、ズームの第1四半期売上高は前年同期比12%増の11億ドルでした。法人顧客数は24%増と、売上の2倍のペースで伸びており、また年間に10万ドル以上を支払う顧客の数は46%増と急増しています。

プラス面とマイナス面

とはいえ、良いニュースばかりではありません。第1四半期の非GAAPベースの1株当たり利益(EPS)は1.03ドルと、前年同期の1.32ドルから減少した他、GAAPベースのEPSは文字通り半減して0.37ドルとなり、営業利益率が10%ポイント近く低下したことが大きく響きました。アフターコロナの世界でもズームが役に立つことを顧客に示すため、同社はマーケティングに多額の費用を投じなければならず、そのコストは前年同期比48%増と急増しました。

プラス面としては、第1四半期の間接費は26%減少し、残りの支出の多くが研究開発(R&D)に充てられました。R&D費は2倍以上(121%増)となり、ビデオ会議分野での主導的地位を維持する一助となるはずです。

要するに、ズームは、オフィスワークへの復帰という、世の中の変化にうまく対応しているということです。投資家は利益率の低下に失望しているかもしれませんが、注目すべき点として、GAAPベースの利益が減少しているように見えるものの、ズームのフリーキャッシュフローは前年同期比で改善しています。第1四半期には、前年同期比10%増の5億100万ドルのフリーキャッシュフローを生み出しました。

ただし、フリーキャッシュフローに関しては、注目すべき点がもう1つあります。S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスのデータによると、ズームをカバーしているアナリストは現在、ズームの2022年のフリーキャッシュフローを15億ドルと予想しています。しかし、投資銀行のパイパー・サンドラーは決算発表後のメモで、ズームの経営陣はこの予想が高過ぎると警告しており、実際には13億ドル辺りが現実的だと指摘しました。

仮にそうなったとしても、ズームの株価は、企業価値フリーキャッシュフロー(EV/FCF)倍率で17.6倍という水準にあります。このバリュエーションは、今後5年間に年率15%の利益成長が見込まれる企業として決して悪くないはずです。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Rich Smithは、記載されているどの銘柄にもポジションを保有していません。モトリーフール米国本社はズーム・ビデオ・コミュニケーションズの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。