香港株が軟調だった要因とは

2022年5月下旬の中国本土市場・香港市場はともに上昇基調となりました。2022年5月13日終値から5月30日終値までの騰落率は、上海総合指数が+2.1%となり、香港ハンセン指数は+6.2%と急激に上昇しています。

上海総合指数は4月末以降、緩やかな上昇が続いているのですが、香港ハンセン指数は5月26日にかけて少し下落した後、5月27日、30日に大きく上昇する形となっています。

香港株が5月26日にかけて軟調になった理由としては、米国株のITハイテク株が軟調となり、香港市場で時価総額の大きい、テンセント(00700)やアリババ・グループ・ホールディング(09988)などのITハイテク株が軟調に推移したことなどが挙げられます。

また、ゼロコロナ政策で上海が都市封鎖となっていたこと、中国当局がゼロコロナ政策の徹底を5月5日に指示したこと、監視カメラ大手、杭州海康威視数字技術(ハンジョウ・ハイクビジョン・デジタル・テクノロジー)(002415)に米国政府が人権関連の制裁を科す準備をしているとの報道があるなど米中対立への懸念もその理由に挙げられます。

さらに、中国当局がインターネットプラットフォーム企業の「是正」に向けた取り組みを「できるだけ早期」に完了すべきとは表明しているものの、時折、規制強化の報道がなされることなども理由となります。。

そして、中国の経済指標はゼロコロナ政策の影響もあって悪化しています。4月の中国国家製造業PMIは47.4(市場予想47.3、前月実績49.5)、中国国家非製造業PMIは41.9(市場予想46.0、前月実績48.4)、Caixin中国製造業PMIは46.0(市場予想47.0、前月実績48.1)、Caixin中国サービス業PMIは36.2(市場予想40.0、前月実績42.0)と概ね市場予想や前月実績を下回っており、景況感の境目である50を下回っています。

他方、資源価格の上昇から4月の生産者物価指数(PPI)は8.0%増(市場予想7.8%増、前月実績8.3%増)、消費者物価指数(CPI)は2.1%増(市場予想1.8%増、前月実績1.5%増)と徐々にインフレの波も押し寄せており、金融緩和の余地が少しずつなくなってきています。

上海の都市封鎖解除と政策期待

それでも中国本土株がプラス方向に動き続けているのは上海のロックダウンが解除の方向に向かっていることと、政策期待によるところが大きいと思います。

中国の李克強首相は5月23日の国務院常務会議で、景気底上げに向けた6分野33項目から成る政策パッケージを決定しました。

主に1,400億元の追加税還付などの積極財政策や、中小零細企業向けの融資支援ツールの増額といった金融緩和策、さらにはサプライチェーンの安定化策、消費・投資の促進策、エネルギー安全維持策、失業対策を含む内容でした。各方面へのテコ入れを通じ、2022年のGDP成長目標である5.5%増の目標達成を目指す方針を発表しています。

そして、上海市では2ヶ月以上続いた都市封鎖を6月1日から解除すると発表しています(最近感染者が確認された一部地域を除く)。さらにこれに合わせて、外食、小売り、観光、航空、運輸の5業種の社会保険料免除や不動産賃料の減免、乗用車購入税の一部を免除、インフラ整備計画の活性化など、「景気の回復と振興を加速する行動方案」を5月29日に発表しています。

むろん、再び新型コロナウイルスの感染者数が拡大して再び都市封鎖が主要都市で行われる可能性も引き続き残るわけですが、上海の都市封鎖解除は中国経済や中国株にとって大きなプラスになるでしょう。

なお、テンセントやアリババ・グループ・ホールディング、小米(01810)などの大手IT企業が1-3月期の四半期決算を発表していますが、上記3社が大幅減益や赤字に転落するなど、見た目は悪い決算となっています。

しかし、内容を細かく見て見ると、概ね想定通りとも言える内容です。4-6月期も1-3月期と同じか、もっと悪い決算が続く可能性が高いでしょう。これらの企業の業績の回復は早くとも7-10月期以降となると思いますが、その分、株価も大きく下がってきたと言えるところで、優良銘柄の株価が下げたところは引き続き投資チャンスであるとの見方には変わりありません。