>> >>バークシャー3年ぶりの対面株主総会、現地レポート【前編】

2022年第1四半期には510億ドル(約6.6兆円)を株式に投資                  

コロナ禍の影響で株式市場に参入する投資家が増えましたが、ウォーレン・バフェット氏は、「ウォール街(米大手金融機関)は株式市場での投機的な行動を奨励しており、事実上、株式市場を『ギャンブルパーラー』に変えた」と非難しています。「過去数年間、マーケットは時々効率的だが、それ以外の時はまるでカジノのようだ」とすら言っています。

S&P500の2021年のトータルリターンは29%でしたが、そんな中でも2021年1年間でバークシャー・ハサウェイは株式の売却を行ってきました。2022年に入って株価が下落していますが、市場の混乱はバークシャーにとって投資しやすい環境を提供していると言えます。2022年の2月に送られた「株主への手紙」の中でバフェット氏は「我々をエキサイトさせる銘柄はあまりない」と書いていましたが、今回大型投資を行うことになったのは「我々にとって非常に興味深い銘柄が浮上したからです」と説明しています。今回、市場が下落している局面で、彼が昔から言っていた「皆が貪欲な時に恐怖心を抱き、皆が恐怖心を抱いている時に貪欲であれ」の原則を行動に移しています。

3月にはオクシデンタル・ペトロリアム(OXY)に70億ドル(約9,100億円)相当の投資を行い、発行済株の約14%分を保有しています。また、バークシャーは、2020年第3四半期にシェブロン(CVX)株への投資を始めました。2021年末時点で45億ドル(約5,850億円)だったのを、3月末には259億ドル(約3.4兆円)までポジションを大幅に増やしています。これによりシェブロンはバークシャーにとって4番目に大きいポジションとなっています。(バフェット氏は、オクシデンタルの資本政策を気に入っており、原油価格の上昇で投資を増やすことに決めたと言います)

また、保険会社のアリゲニー(Y) を 116億ドル(約1.5兆円)で買収しています。その理由は、保険ビジネスはバークシャーにとって自然に調和する事業だからとのことです。

バークシャーは、2021年の第4四半期中に10億ドル(約1,300億円)相当のアクティビジョン・ブリザード(ATVI)株式を購入していますが、2022年の1月に入ってマイクロソフト(MSFT)が、アクティビジョン・ブリザードを1 株当たり95ドルで買収すると発表しています。バフェット氏は、その後「(同社の)株価は95ドルをかなり下回っているので、買収発表後に株式を買い増しし、現在発行済株式数の約9.5%を保有している」と語りました。

結局バークシャーは、第1四半期には510億ドル(約6.6兆円)相当の株式投資を行ったと発表しています。

加えてバークシャーは、同社の自社株買いに32億ドル(約4160億円)を使っていますが、これは2021年第4四半期の69億ドル(約8970億円)からすると大きく減っています。2022年の第1四半期にはS&P500が5%下がっているにも関わらず、バークシャー(BRK.B)の株価は18%上昇していますので積極的な自社株買いを行わなかったのは理解できます。

その後4月に入ってからはPCメーカーのHP(HPQ)に 42億ドル(約5460億円)相当の投資を行ったと発表しました。 これによりバークシャーはHPの発行済株式の11.4%を保有していることになります。同社の過去12ヶ月のEPSをベースにしたPERは6.6倍と、明らかにバリュー銘柄となっています。

バークシャーはまだ手元に多くの現金を保有しており、今後、機会主義的に投資を継続するとしました。

バークシャーの3月末時点でのトップ保有銘柄は引き続きアップル(AAPL)で、3月末の保有残高は1590億ドル(約20.7兆円)となっています。続いてバンク・オブ・アメリカ(BAC)の426億ドル(約5.5兆円)、そしてアメリカン・エキスプレス(AXP)の284億ドル(約3.7兆円)となっています。 

投資のタイミング、「将来のことは誰もわからない」

バフェット氏は、これまでも「私は将来のことを当てることはできない」と言ってきました。今回も会場の株主から質問から答えるかたちで、「将来の業績、株価や景気の見通しについて、世間では色々な意見があるものの、誰も当てることはできない」と述べています。バフェット氏は、「マーケットのタイミングを測ることは得意ではない」とし、「もし私にタイミングを測るセンスがあるならば、2020年3月のコロナショック時に株式を買っていただろう。しかし、あの時、私は完全に投資のチャンスを逃した」としています。「私は月曜日のマーケットの寄り付きにどうなるかというアイデアすら持ち合わせていない」と語ります。

バフェット氏は、「マーケットが今後どうなるかという情報を判断することで株式の売買をしたことはなく、マーケットの波に乗らず、長期的に投資をするだけだ」と言います。そこでマンガー氏が「そう言った意味では、経済の見通しの判断でも株式の売買を決めたことはない」と補足しています。その理由については「単純にわからないから」と言うことです。

株式の本来の価値と比べ株価が安い場合だけに投資をする、という大原則を徹底して守っています。また、株式を購入してから「しばらく株価が下がってくれることを希望する」としています。なぜなら株価が下がるともっと安く買えるからです。このような発言から、あくまでも長期的な視線で投資を考えていることが読み取れます。普通の投資家であれば、株式を買って株価が下がるのを嫌がるでしょう。

インフレ局面で何に投資をすべきか

会場にいる若い女性の株主から、「モノやサービスの値段が上がるなか、どの銘柄に投資をすれば良いですか」という質問が出ました。これに対して、バフェットは笑いながら個別銘柄の回答は避け、こう答えました。「それはあなたが何か得意なことをベストでできるようにすることです。あなたの町でベストの医者だとします、ベストの弁護士だったとします、歌でも、野球選手でも何でもいいです。それをベストでできるようになることです。あなたがベストでできることを提供することで、相手は彼らが生産するものと交換してくれます。誰もあなたからあなたの能力を取り上げることはできません。最高の投資というのは、あなたを成長させることです。その能力に対しては課税もされませんしね。私なら、そうします」と答えました。(つまり、1つの決まった目標をひたすら追い続けるよりも、自分が得意なことを知るために時間を使うことが大切だと言います)

2001年の株主総会でも、「可能なベストの投資は自分自身に対する投資だ」と全く同じことを述べていました。これはバフェット氏が自分に対して行ってきたことなのでしょう。

中国の政治リスクと、魅力的な株価の安さ

マンガー氏は、中国に投資してきたのは「魅力的な会社を安く買えるから」だとしています。「安くて良い会社を買うためであれば、少しくらいのリスクであれば喜んでとる」とし、「他の人は私と全く違う意見を持っているようです。50年前の中国より、今の中国を恐れている人が多いのかもしれません」と語りました。

バークシャー子会社のサービス・製品に触れて気づいたこと

株主総会の会場内でバフェット氏のパネルとともに

今回もバフェット氏とマンガー氏は、5時間を超える長丁場の株主総会を無事終了しました。2人とも90歳を超えていることを考えると、これは大変なことです。つくづくエネルギッシュな経営者だと思いました。

バークシャーは90以上の子会社を所有しています。株主総会の会場に隣接したホールには、バークシャーが保有する数十の企業のブースが設置されており、サービスの紹介や代表的な製品が展示されていました。総会を終えてから、これらの子会社のサービスの紹介や製品を見ることができました。

この時、改めて考えさせられたことがあります。実は私はバークシャーは複雑な企業だと思っていたのです。それが今回そうではないと実感したのです。つまり、バフェットは米国人に日常的に愛され、使われている、または必要とされている企業をバークシャーのポートフォリオに入れているということです。それがバークシャーだと思ったのです。

例えば、自動車保険のガイコは、車社会の米国において欠かせない自動車保険の大手です。今後人口が増える米国において、運転者も増えるでしょうし、自動車保険の市場もさらに拡大していくでしょう。シーズ・キャンディーズは米国人が大好きなお菓子ですし、デイリークイーンのアイスクリームも老若男女に愛されています。またデュラセルの電池も日々の生活に欠かせません。フルーツ・オブ・ザ・ルームは1851年に創業されたTシャツの老舗ですが、今も昔も米国人はTシャツ好きです。

バフェット氏は、自分が理解できないテクノロジー企業には投資しないと言っています。米国人の誰もが理解でき、キャッシュを生み出している企業のコレクションがバークシャーと言って良いのではないかと考えた次第です。そういった企業のビジネスは、これからも米国経済が成長するのであれば、成長を続けていけると思います。

※現在の為替レートは1ドル=130円で換算