かつて「ハゲタカ」と呼ばれ、2000年代にアクティビストとして活発に活動していたサーベラス・キャピタル・マネジメント(以下、サーベラス)。最近では、あまり積極的に日本企業に投資していませんが、日本での活動を続けています。

この記事では、サーベラスが過去にどのような日本企業に投資してきたかについて解説します。

サーベラス・キャピタル・マネジメントとは

サーベラスは、米国の年金基金や機関投資家から集めた資金を運用している米国の投資ファンドです。債券から株式、不動産まで幅広く投資しています。1992年に設立され、世界全体で約550億ドルの資産を保有しています。

日本では1998年4月に投資を開始し、日本国内だけで1兆円近くを投資していました。投資案件としては、あおぞら銀行(8304)、国際興業、西武ホールディングス(9024)、東芝(6502)などがあります。それぞれの企業への投資内容をご紹介します。

国際興業への投資

サーベラスは国際興業が2004年に経営危機に陥った際に買収し、傘下に収めました。同社は、当時のメインバンクであった旧UFJ銀行から国際興業の債権を大幅なディスカウントで取得。そして、同社は帝国ホテルやバス会社、ゴルフ場など、国際興業の優良資産を次々と売却し、資産を売って上げた利益を特別配当のかたちで受け取ってきました。

しかし国際興業は、これ以上、資産が売却されると事業の継続が困難になると判断し、売却益をサーベラスからの株式の買い戻し原資にすることを提案。サーベラスは、その時点で十分に利益が出ていたため、この申し出を受け入れました。

あおぞら銀行への投資

サーベラスは、あおぞら銀行にも投資しました。あおぞら銀行は1998年に経営破綻し、一時国有化された旧日本債権信用銀行が母体となりました。預金保険機構が同行をソフトバンク(9984)やオリックス(8591)を中心とするファンドに売却した後、2003年にサーベラスが株式を引き受け、筆頭株主となりました。

その後、2012年9月にサーベラスはあおぞら銀行の株式を売却する意向を表明し、あおぞら銀行も資本政策とともに主要株主の売却意向を明らかにしました。その売却の規模は2000億円になりました。

西武ホールディングスへの投資

サーベラスは、2006年に西武鉄道に投資。西武HDの前身である西武鉄道が有価証券報告書の虚偽記載で上場廃止に追い込まれた後です。

当時、西武鉄道は一連の不祥事の責任を取って堤義明氏が辞任するなど、経営が混乱状態に陥っていました。そこで、サーベラスは2006年に約1000億円を出資し、西武の株式の約30%を保有する大株主となり、西武鉄道を支援しました。

そして、2006年2月にサーベラスからの出資を受けて西武HDが設立されました。不祥事による経営不安を払拭するため、旧みずほコーポレート銀行から派遣された後藤孝志社長(当時)は「峻別と集中」を掲げて経営改革を推進。プリンスホテルやゴルフ場、スキー場など、赤字の施設の売却や休止を進めました。その一方で、利益増が期待できる施設の大胆な改装やブランディングを実施。これらの施策が功を奏し、目標よりも早く、有利子負債の大幅な削減を達成しました。

サーベラスはホテル事業など経営面で西武HDに協力しましたが、再上場の方針を巡って対立。2013年にサーベラスは西武HDに対して公開買い付け(TOB)を実施し、目標には届かなかったものの、西武HDの株式の保有比率は35.45%に高まりました。

しかし、西武HDの業績回復とともに徐々に対立が弱まり、2014年に西武HDは再上場しました。西武HDの株価の初値は1,600円でしたが、2015年4月には3,695円まで上昇。サーベラスは上場後に徐々に株式を売却し、多額の利益を得ました。

2017年8月、サーベラスは保有する西武HD株をすべて売却しました。アクティビストは一般的に3〜5年程度の運用で売却すると言われています。それと比べると、サーベラスは西武HD設立から11年と、長期にわたって株式を保有してきたと言えるでしょう。

サーベラスは、過去にあおぞら銀行や国際航業に出資してきましたが、西武HDの株式売却により、日本での投資案件はほぼなくなりました。同社は、経営や財務が悪化した企業への投資を得意としており、近年は資金の大半を欧米の企業に振り向けています。日本から完全撤退していないものの、新規案件の発掘は凍結するとしました。

東芝の増資を引き受ける

ただ、サーベラスはその後、東芝の増資を引き受けています。東芝は、2015年の不正会計問題や2016年の米国原子力子会社ウェスチングハウス・エレクトリック・カンパニーの巨額損失計上による上場廃止危機を回避するため、2017年12月に第三者割当増資で約6000億円の資金を調達しました。

東芝の第三者割当増資は、サードポイントやサーベラスなど、60もの海外ファンドが引き受けています。

サーベラスは日本での陣容を大幅に縮小したものの、引き続き日本での投資機会をうかがっていると考えられます。再び日本企業への投資を積極的に行うかどうかに注目したいところです。