マネックス証券が2021年10月より掲げている新たなブランドビジョン「大切なものに投資をしよう」には、投資の価値を儲けや利益だけではなく、それぞれの未来や夢を実現させるものへと進化させていきたいという思いが込められています。そこで、このビジョンが生まれた背景をより多くの方に理解していただくために、投資を通じて「大切なもの」の実現に向けた未来づくりをサポートするマネックス・アナリスト陣にインタビューを実施しました。

アナリスト陣が考える、「大切なもの」とはどのようなものでしょうか?第6回目はチーフ・アナリストの大槻奈那のインタビューをお届けします。

新しい見方をするには勇気や自信が必要

――これまでのキャリアに影響を与えたものを教えていただけますか?

大槻:私の父は物理学者ですが、投資も好きで、自宅の本棚には『ファインマン物理』の隣に『株式投資の科学』などの投資本が並んでいる環境で育ちました。その影響もあり、投資に対する抵抗感はありませんでした。
 
大学では文系に進み、卒業後は信託銀行に入社。その後、金融を体系的に学ぶためにロンドンに留学してMBAを取得しました。

――アナリストとして大槻さんが大切にしていることは何ですか。

大槻:アナリストとして大事にしていることは、情報の切り口を見つけることです。言葉の意味として「アナリスト=分析する人」ですが、情報を分析するだけではアナリストと言えず、予想することで初めてアナリストと言えると思います。

昔は、「早耳情報」などといって、憶測を含め、情報をいかに早く得て伝えるかが証券会社の勝負だったようです。しかし、今では、誰でも瞬時に情報が得られる時代ですから、情報のどこにフォーカスするか、つまり、切り口にこそアナリストの差や個性が出てくると思います。

みんなとは違う、新しい見方をするには勇気や自信も必要です。実はプロの証券アナリストでも、コンセンサス予想に従ってしまう誘惑にかられます。これは日本だけでなく世界的な現象です。しかしその誘惑に負けては投資家に新たな価値をもたらすことはできません。なので、できるだけ人と違う情報を提供するように心がけています。そのために、私は仮説を立て、異業種の方々を含めていろいろな方の話を聞くようにしています。そして、その仮説が正しかったとわかったとき、本当に嬉しいと感じます。

――仕事に対するモチベーションの源はどこにあるのでしょうか?

大槻:暦の上の休日でも、完全に仕事と切り離して過ごせないタイプです。「止まると死んでしまう回遊魚みたいだ」と言われることもあります(笑)。実際に止まることへの怖さがあるのかもしれません。なので、何かやらねば…と思うのでしょうね。自らが動くことで、昨日の自分よりマシになっていたいし、明日が今より辛くないように、今日頑張る。そのような思いが自分の軸として1本あるんです。

思い込みを取り除き、正しい知識を身につける必要性

――金融教育の大切さについてご自身の考えを教えていただけますか。

大槻:私はマネックス・ユニバーシティ長として投資教育にも取り組んでいますし、大学でも、人々が持つ様々な思い込み、つまり、心の「バイアス」の研究を行っています。これらを通じて、正しい知識を身につける金融教育の必要性を伝えていきたいと考えています。

例えば現預金です。少し前までの日本はデフレで、勝手にモノの値段が下がってくれるので、お金をそのまま持っているだけでも翌年にはモノが買いやすくなっていたりしました。

しかしインフレになると、お金を現金として置いておくだけでは目減りしてしまいます。インフレは、モノの値段が高くなることですが、逆に言えば、モノに対してお金の価値が下がることでもあります。しかも、銀行は預金が余っているので、当面預金金利は上がらないでしょう。だとすると、ほぼ無利息の銀行預金に預けておいても、お金の価値が下がるリスクはカバーできません。しかも今は約20年ぶりの円安なので円の預金は先進国最悪に近い投資手段だと思います。防衛的な手段として預金以外の投資を検討すべきだと思います。

また、「世界に分散する投資が一番」という考え方も一般的ですが、地政学リスクの高まりで、新興国等への分散はリスクもあります。分散投資は手数料もかかりますが、その割にリスクが回避できていないかもしれません。そうしたリスクとリターンも考える必要があります。

お金は人生の選択肢を広げてくれるもの

――投資初心者の方々にどのようなことを伝えたいですか。

大槻:初めて投資をする方に伝えたいことは、「企業を応援したい」「一緒に成長したい」という想いで行う投資もあるということです。

“大切なもの”には、自分のための利益を目的とする短期的な投資だけでなく、長期的な目線で物事を俯瞰しながら、次世代が作り上げる未来も含まれるでしょう。これはまさに、持続可能なより良い社会の実現を目指すSDGsの根幹をなす考え方だと思います。

――大槻さんの人生で大切なものを教えてください。

大槻:お金は大切で、あれば人生の選択肢が広がります。ただ、お金はすごく柔軟なものです。無ければ無いなりの生活ができると思いますし、絶対的なものではないと思います。

最終的に一番大切なものは、信頼や愛情ではないでしょうか。大切な人からの信頼や愛情を失ってしまったり、相手への信頼や愛情が薄まったりしたら、生きていくのが相当苦しいと思います。

今、大きな愛情をかけて育てているのが、このゴールデンウイークで満2歳になった猫です。保護猫の活動に関心があり、寄付を通じて支援しています。今後、機会があればボランティアにも参加してみたいですね。

最近では、猫がトイレに行くたびにその様子をデータとして保存できるアプリがあるんです。それを使って飼っている猫がトイレに行った回数や、体重、尿の量などを毎日チャートにして分析しています。何でも分析したくなるのは、もはや職業病ですね(笑)。