景気には在庫から技術革新に至るまで様々なサイクルが言われておりますが、実際に世界経済の中心である米国の場合はNBER(全米経済研究所)という民間組織が、経済の落ち込みの深さ・長さ・幅広さを判断基準として景気の山・谷を定義していることが知られています。また景気拡大は通常金融引き締めによって終焉を迎えてきました。
NBERによると冷戦終結以降の約30年では景気拡大期は平均107ヶ月です。様々な要因で景気サイクルが形作られるものの、グローバル化による世界的な物価の落着きで、なかなか金融政策が引き締めに至らなかったことは景気拡大を長引かせた要因の一つと考えられます。ちなみに冷戦終結以降の米国CPI前年比は平均で年2.2%(1992年-2020年)、冷戦終結以前は同5.0%(1960-1991年)です。
地政学的な情勢変化を受けて、今後は冷戦以前への回帰と言わないまでも、商品市況に加え、サプライチェーン再構築などグローバル化から逆戻りする流れによる持続的な物価上昇とそれに続く金融引き締めとなれば、今後の景気回復サイクルは短期化が意識されます。なお冷戦終結以前の約30年では景気拡大期は平均60ヶ月でした。物価や金融政策の構造的な変化の可能性は中期的な景気動向を占う上で注目されます。
ではそれに備える投資戦略についてですが、景気サイクルの成熟化に合わせ、金融引き締めが進む局面で徐々にディフェンシブに、もしくは株から債券にウェイトをシフトするなど、またその逆の局面への対応も含めてサイクルに合わせ資産配分を適宜変更することが理想的ですし、短サイクル化はそのような機会に直面しやすくなります。
また機動的な運用に加えて、コモディティ・ヘッジファンド運用など伝統資産と異なる動きをするオルタナティブ資産を活用することで、ポートフォリオ全体のリターン安定化が図れますし、投資信託などを通じたこのような資産への投資手段は増えてきています。中長期の資産運用を考える上で複数の資産クラスによる分散投資は、心理的な面も含めて相場変動の影響を軽減させられるでしょう。
次回より景気・各資産クラス動向やサイクルに見合った投資戦略等を提供してまいります。