日本の個人投資家を取り巻く環境において、現在、懸念されている2つの事象はインフレと円安です。消費者物価指数の上昇は国内ではまだ顕在化していませんが、円安は既にかなり進んでおり、今後の為替レートの動きには警戒が必要です。
円安はまだ続く可能性がある
円安が進んでいる構造的要因は、日銀の金融緩和政策の継続による内外金利差です。今週から来週にかけて日銀政策決定会合、米連邦公開市場委員会(FOMC)と日米の会合が予定されており、金融政策に動きが出る可能性があります。
内容によってはゴールデンウィークに一段の円安が進む可能性も否定できません。いずれにしても、外貨資産を増やす方法を考えておく必要があります。
株式型の投資信託は長期で積立を
金融資産を使って外貨を増やす方法の1つは、投資信託の活用です。
外国株式に分散投資する投資信託を活用すれば、国内で設定されたファンドであっても外貨に連動した運用成果が期待できます。
為替の変動と株価の変動という2つのリスクを取ることになるため、時間の分散が重要になります。投資信託のメリットである月次の積み立て機能を使って投資金額を増やしていくのが良いでしょう。
先進国と新興国のインデックス運用が基本
外国株式の投資信託は、投資対象で先進国と新興国に分かれます。日本を除く先進国の株式はMSCIコクサイ・インデックスと呼ばれるインデックスが代表的です。
一方、新興国の株式のインデックスは、同じMSCI社のエマージング・マーケット・インデックスが代表的な指数となります。
ネット証券では、それぞれのインデックスに連動する低コストのインデックスファンドが提供されています。
この2つのインデックスファンドを組み合わせて投資をしていくのが良いでしょう。組み合わせ比率は、保守的に考えるのであれば先進国株式を多めに、リスクを取るのであれば新興国株式を多めにしていくのがセオリーです。
債券型の商品は金利上昇リスクに注意
債券型の金融商品には、投資信託や米国債のような現物債券がありますが、債券は市場金利が上昇すると価格が下落する特性があります。
金融引き締めによって、しばらく世界各国の金利上昇が予想される中、債券型の商品には金利上昇による価格下落リスクがあり、今は積極的に投資するタイミングではありません。
FXなら低コストで為替リスクだけにフォーカス
株式型の投資信託と並ぶもう1つの外貨金融商品として、FXの活用も考えましょう。
FXは、ハイリスクのトレーディング商品と思われがちですが、リスクが高いのは高いレバレッジをかけた場合だけです。
日本の個人投資家は最大25倍までのレバレッジをかけることができますが、証拠金の金額を多くすれば自分でレバレッジを下げることは可能です。
例えば 130万円を証拠金として使い10,000ドルの外貨ポジションを作れば、外貨預金を10,000ドルするのと同じリスクになります。
為替手数料を考えれば、外貨預金よりもFXを活用した方が圧倒的に低コストです。
また株式型の投資信託と比較した場合、FXには為替リスク以外の大きな変動要因がありません。もし株価に関しても慎重な見方をしているのであれば、株式型の投資信託よりもFXを使い為替リスクだけにフォーカスした方が、理にかなった投資ができます。
資産全体の外貨比率をチェックすべき
ここで説明したような外貨商品に関して理解を深めることも大切ですが、それ以上に重要なことは、資産全体の外貨比率をコントロールすることです。どの商品を使うかよりも、どの程度の外貨比率にするかを考えることが、為替の変動から資産を守ることになるのです。
今後、円安が一段落し、逆に円高に触れる局面もあるかもしれません。しかし、日本人にとって最大のリスクは円安の中で外貨資産を持たないことです。
自分の資産をモニタリングしながら、為替リスクを上手にコントロールして、市場の大きな変化に対応できるよう資産防衛していきましょう。