円「売られ過ぎ」の反動リスクに注意

今週末からゴールデン・ウィーク(GW)が始まるが、日本の市場参加者が少なくなるGWではこれまで何度か、薄商いの間隙をついたような「円高パニック」が起こった。主因は、円売りに傾斜したポジションの逆流ということが多かった。

最近にかけて、記録的なペースで米ドル高・円安が展開する中で、CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円売り越しは10万枚以上に拡大するなど、円の「売られ過ぎ」懸念も拡大していると見られるだけに、一応注意が必要かもしれない(図表参照)。

【図表】CFTC統計の投機筋の円ポジション (2015年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

GWの「円高パニック」は、とくに2008~2011年にかけて4年連続で起こったことから、強く記憶される「アノマリー」の1つとなった。中でも印象的だったのは、2010年ではないか。当時、5月5~7日にかけて最大5円もの米ドル/円暴落となった。きっかけは、ギリシャ債務危機。

ギリシャ債務危機とは、その後2012年にかけてイタリアやスペインなどにも波及、欧州債務危機として世界経済のリスクオフ要因になるが、それが最初に表面化したのが、ちょうどGWのタイミングとも重なったことから、2010年のGWはリスクオフの「円高パニック」が広がった。

他の「GW円高」として、2008年は5月7~9日中心に最大3円、また、2009年は5月5~15日で最大5円、そして2011年も4月27日~5月5日で最大3円といった具合に、米ドル/円急落が繰り返された。

このような「GW円高」の共通点は、上述のように日本の長期休暇で市場参加者が少なくなることで、何かのきっかけで値動きが荒れやすくなるということ。そしてそれが「円高パニック」となったのは、ポジションが米ドル買い・円売りに傾斜し、その反動が入りやすいという状況が基本だった。

このうちの後者は、今回の場合も近い構図にある可能性がある。3月以降記録的なペースで米ドル高・円安が広がる中、上述のようにCFTC統計の投機筋の円ポジションは、売り越しが10万枚以上に拡大し、経験的には円の「売られ過ぎ」懸念が高まっている。

2022年のGW前後のタイミングでは、5月4日にFOMC(米連邦公開市場委員会)、6日は米雇用統計発表といった注目イベントも予定されているが、イベントのタイミングはポジション調整のきっかけになるといった傾向もある。

とくに今回のFOMCでは、0.5%以上の大幅な利上げ予想が強いが、これを受けた米ドル高・円安の反応を見極めた上で、米ドル買い・円売りに大きく傾斜したポジションの調整が本格化する可能性は注目されるのではないか。