みなさん、こんにちは。日経平均は一進一退の動きが続いていますが、その振幅は比較的大きく、かなり不安定な相場展開となってきています。

ロシアによるウクライナ侵攻の行方は依然混沌としている上、急激な円安も進行してきました。中国のゼロコロナ政策に伴うサプライチェーンの目詰まりも顕著になるなど、色々な場面や局面で停滞感が蔓延してきたように感じています。当面はこの不安定な相場がまだ続くことを前提としつつ、この停滞局面が明けた後を見据えた投資スタンスがより重要になってきているように私は考えます。

バリュー株の投資戦略とは

さて、今回は「バリュー株」を採り上げてみましょう。ここ最近はかなりボラティリティの高い相場が継続しています。ボラ相場に向き合う戦術などは既にこのコラムで何度か触れていますが、今度はそういった際に主たる投資対象となるバリュー株について、実際にどのように選ぶのかを考えてみたいと思います。

なお、ここでのバリュー株とは(考え方は色々あるものの)、様々な指標から見ての「割安株」と定義したいと思います。バリュー株の対義語としてはグロース株があり、前者が割安性から注目される銘柄群、後者が成長性から注目される銘柄群となります。

つまり、かなり乱暴な議論となってしまいますが、バリュー株投資は成長に大きく期待するものではなく、割安に放置されている銘柄が適正に評価される際に発生する利益の獲得を目指す、というスタイルと考えていただいて良いでしょう。

また、何を以て「長期保有」というのかという点についても議論の余地があるところではあるのですが、成長を見据えたグロース株投資では、成長を確認できている限り、焦って手仕舞う必要は基本的になく、長期保有が向いていると言えます。

対照的に、バリュー株投資は適正な評価となった時点で積極的に手仕舞うことが重要になってくることは肝に銘じておきたいところです。

バリュー株の本質「割安」を判断する基準とは

では、バリュー株投資の本質となる「割安」とは、何を以てそう判断するのでしょうか。かつては株価純資産倍率(PBR)の1倍割れがその基準と認識されていました。PBRが1倍以下とは、株価が純資産(=企業の解散価値)を下回るということであり、普通に利益を計上できている企業であれば異常事態とも言える水準です。まさに割安ということになるわけです。

しかし、2000年代以降、この考え方はかなり変わってきました。現在、全上場企業約3,850社のうち、PBRが1倍割れの企業はなんと1,870社にも及びます。実に上場企業の過半が異常事態となってしまい、割安感が生じなくなってしまったのです。

しかも、数字上は株価が解散価値を下回っていたとしても、実際に解散することはまずなく、仮に解散すれば多くの追加損失が発生するだろうとを考えると、現実には解散価値をまだ割り込んではいないのでは、という見方も浸透して来ました。

結果として、PBRが1倍割れ=割安とは言い難く、PBRの1倍割れが「割安」のベンチマークというのは今やかなり古典的解釈となってしまっているのです。現在、PBRはROEと比例関係にあることから、資本コストを収益でカバーできていない企業がPBR1倍割れにあるという認識になっています。

もちろん、PBRの他、PERなどのバリュエーションにおいても、その数値が低い状態は概して「割安」ということができます。しかし、この場合、それには理由があって割安のまま放置されているのか、一時的に割安になっているのか、を見極める必要があります。解散価値といった絶対的な基準に対しての割安感ではなく、あくまで相対的な判断になるためです。

実際、理由があって「割安」に見える状態が長年継続しているのであれば、それは最早適正な評価に他なりません。バリュー株投資でよく起きる失敗はこういうケースで、万年割安株(=実は適正評価)を選択した結果、期待するリターンを得ることができないというバリュートラップ(割安のわな)に嵌まることになってしまうのです。このようにバリュー株を選別することは非常に重要なのです。

配当利回りをバリュー株選びの注目指標にするのも戦略の1つ

ちなみに、私は配当利回りをバリュー株選別の際の注目指標としています。一般に、配当は安定的に支払われるケースが多く、企業経営者も減配は極力避ける傾向にあります(実際、減配が役員賞与減額の理由となるケースも少なくありません)。

そのため、一定水準以上の配当利回りの株価はかなり下値が固いということが言えるのです。これはバリュー株投資、つまり下値不安の少ない株式への投資という条件をかなり満足させるものとなります。

同時に、当然バリュートラップ銘柄でないことを確認すべく、過去の株価推移や割安(=高い配当利回り)となっている原因も考えます。もちろん正解はわからないのですが、与えられた情報の中でしっかり考えて万年割安放置株ではないと判断を下すことが重要なプロセスになるのです。仮に誤った判断でバリュートラップに嵌まってしまったとしても、配当利回りが高ければ配当だけでも悪くないリターンは確保できるという計算も成り立ちます。

もちろん、これには減配リスクが小さい企業を選別する必要があるのですが、これに関しては以前に日本株の高配当銘柄の見極めをテーマにしたコラムを執筆しています。こちらも参考にしていただければ嬉しい限りです。バリュー株投資に向けての1つの考え方として、読者のみなさんの参考になれば幸いです。