ブランデス・インベストメント・パートナーズ(以下、ブランデス)は、バリュー投資をメインにしているアクティビストです。この記事では、同社の日本企業への投資事例について解説します。
ブランデス・インベストメント・パートナーズとは
ブランデスは、米国拠点の投資ファンドで、顧客の株式や債券を運用しています。1974年の設立以降、米国の経済学者であるベンジャミン・グレアム氏が提唱したバリュー投資の理論を用いて銘柄選定を行っています。
そして、グローバルな視点を持ったバリュー投資家、アクティビストとして活動しています。同社は本質的価値と比べてかなり低い価格で取引されている債券や株式に投資します。
また、短期的に株価が下落しても保有株を売却せず、中長期的な収益獲得を目指しています。同社は債券や株式などの有価証券を通常2~5年間保有し、有価証券の価格が本質的価値に近づいたら売却し、その利益をより割安な銘柄を購入するための資金に充てています。
1997年の3月に日本株に特化したポートフォリオを設定しました。同年12月に日本の資産運用会社からの委託を通じて日本からの資金を受け入れ、運用を開始しました。
日本企業への投資事例
小野薬品工業への投資
2007年3月、小野薬品工業(4528)の3月期の配当に関して同社が予定していた1株100円に対し、ブランデスは700円を要求しました。小野薬品工業はこの提案を拒否しましたが、自己株式の取得と配当を併せた総還元性向100%を目標にし、2008年3月期の年間配当を180円にすると発表しました。
そして、翌年2008年4月にも、ブランデスは小野薬品工業に対し、年間配当220円の引き上げと自社株買いの増額の株主提案を出しました。これに対し、小野薬品工業は2008年3月期の年間配当を202円(うち特別配当22円)する見通しを示しました。また、550万株(300億円)を上限とする自社株買いを発表しました。
これを受け、ブランデスは小野薬品工業が今後、さらなる株主への利益改善に向けた多くの施策を続行するとし、株主提案を取り下げました。
ロームへの投資
ブランデスが2008年12月に関東財務局に提出した大量保有報告書で、同社がローム株の保有比率を6.15%から6.44%に引き上げ、保有目的を「株主として利益享受の増進のためローム側と協働し、最終手段としては重要提案行為を正式に行う可能性がある」に変更したことが明らかになりました。
そして2009年4月に、同社はローム(6963)に対して250万株(150億円)を上限とする自社株買いの株主提案をしました。同社は、ロームには2008年末時点で現金と有価証券の残高が3110億円あり、提案した自社株会の規模は5%に満たないと説明しました。
しかし、ロームは同社の株主提案に反対を表明。ロームは2007年に「連結フリーキャッシュフローの100%を下回らない額」を株主に還元する方針を示していたものの、2009年3月期の連結フリーキャッシュフローが150億円を大幅に下回っていたことが背景にあります。
またロームは指摘を受けた3000億円を超える金融資産についても、リーマンショック後で「景気の先行きが不透明な状況において、現在の手元流動性を確保することは重要だ」と主張しました。
同年6月26日の株主総会では、反対多数でブランデスの株主提案は否決されました。ロームの株主は当時、外国人投資家が約46%を占めていました。議決権行使助言コンサルタントのISSがブランデス・インベストメント・パートナーズの株主提案に対する賛成を推奨したこともあり、提案可決も期待されましたが賛成票は28%に留まりました。
結果的に否決されたものの、ブランデスの株主提案に一定の説得力があったことや、株主の目が着実に厳しくなっていることを示す事例だと思います。
大塚家具への投資
2017年3月、大量保有報告書によってブランデスが大塚家具の株式を5.13%取得していることが明らかになりました。ただ、同社は以前から大塚家具の株式を保有していました。
同社は大塚家具の株式を買い増しし、一時10%以上保有していました。2015年に大塚家具の創業者の大塚勝久氏と長女の久美子社長(当時)が株主総会で委任状争奪戦を展開した際には、久美子氏を支持していました。
その後、同社はなかなか業績が改善しない大塚家具に見切りをつけ、2018年に保有株式を全て売却しました。売却前6.41%の株式を保有していましたが、大塚家具が2018年12月期の第2四半期累計(1~6月)で35.06億円の営業赤字を計上したことなどから見切り売りをしたようです。
大塚家具は2019年12月にヤマダホールディングス(9831)から過半数の出資を受け、傘下に入りました。そして、2021年7月の株主総会で完全子会社になることが決定。同年8月30日に上場廃止となりました。
バリュー投資の理論を用いて銘柄選定を行うブランデスは、アクティビストの中では穏健派と見られています。それでも同社は投資先に自社株買いや配当の増額などを要求しており、日本企業の経営においても時折、影響力を発揮しています。今後、同社がどの日本企業に投資するのかに注目したいところです。