一時の世界同時株安という状況は脱し、株式相場は戻りを試す局面となっている。相場下落を招いたロシアのウクライナ侵攻やFRBの金融引き締めという要因が決着したわけではない。ただ、原油価格の上昇が目先、一服となったことや、FOMCが想定通りサプライズなしの通過となったことで、市場の不安心理を後退させたのだろう。中国の政策期待で中国株が大きく反発したことも追い風となったと思われる。
今週の日本株相場の焦点は、日経平均が75日移動平均で頭を抑えられることなく、それを上抜けて、2万7500円の節目を突破できるかどうかという点である。そのための好材料としては需給の改善が挙げられる。まず9月高値の信用期日明けで需給が軽くなっている。加えて、株式相場が下がったことによる年金基金の四半期末・年度末リバランスでの株式の組み入れが期待される。権利付き最終売買日に向けては権利・配当取りの買いも増えるだろうし、機関投資家の配当再投資に伴う先物買いが入る。さらに、それを見越した先回り買いも相場を支えるだろう。
新型コロナウイルス対策の「まん延防止等重点措置」が21日をもって全面解除となった。OLCやJR東海などはすでに高値圏まで買われているため、改めて上値追いの材料にはならないが、市場心理の改善には寄与するだろう。
物色の流れはグロース株のリバウンドが続くかに注目だ。米国株ではナスダック、日本株でもマザーズの戻りが顕著だった。ずっと売られてきたグロース株は、FOMCでの利上げ開始のタイミングで反転したが、典型的なBuy on Rumor, Sell on Fact の逆である。だとすれば、グロース株の買い戻しもそろそろ一巡する頃か。
今週は主要な経済指標の発表が少ない。イベントとしてはニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁やサンフランシスコ連銀のデイリー総裁の討議、クリーブランド連銀のメスター総裁の講演など連銀総裁の発言に注目。また、政治的な会合としてはEU首脳会議と北大西洋条約機構(NATO)緊急首脳会議が注目される。これらを踏まえて、ロシア・ウクライナの停戦交渉の行方が短期的には最大の株価材料であることに変わりはない。いったん合意に至れば、株価はさらに上伸するだろう。目先の底は入ったと思われるので、アップサイドに備える状況だろう。